チー付与50話 決別と更生

ネタバレ注意

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こんにちは、midnight historiaです。
「追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~」(通称:チー付与)50話の感想です。https://comic-days.com/episode/2550689798576140279

簡単にいうと今回の話は、「一度道を誤った者、大きな罪を背負った者が更生することの難しさ」が主題になっています。

「更生」支援者としての工房の主人

今回の主役であるミラベルは、暗殺業、ひいては暴力そのものから足を洗うために服飾工房へ弟子入りします。

しかし、「暗殺の母」一家の構成員であったという「過去」の呪縛がこれを阻みます。

忍者の里の一族は、「暗殺の母」の息子たちを手駒とするべくミラベルの拉致を目論み、「暗殺の母」の息子たちも当初はミラベルを裏稼業に引き戻そうと画策します。

これに対して工房の主人は、ミラベルの庇護者として「暗殺の母」の息子たちに、ミラベルの更生の意思を伝え、彼らに釘を刺します。

この工房の主人は、更生の支援を行う理由として、「それが社会だからだよ!」と述べ、自分が社会のセーフティーネットであろうと努めます。

ただ、工房の同僚たちは「暗殺一家」への不安を漏らし、主人もミラベルの処遇をはっきりと決めたわけはないようです。この点は、罪を犯してしまった者の支援者を快く思わない「世間の風当たり」の描写であり、更生支援の難しさというリアリティを漫画に持ち込んでいると言えるでしょう。

兄弟たちの決別

「暗殺の母」の息子たちも、ミラベルの更生の意思を理解しますが、自分たちも足を洗うという発想はありませんでした。なぜなら、「半グレ冒険者」のような排他的な同胞愛(身内に甘く、裏切り者を徹底的に追い詰める)が彼らの行動原理であり、「暴力の世界」からは逃れられなかったからです。

しかし、「暗殺の母」の息子たちにとって未だミラベルは大切な家族であり、わざとミラベル危害を加えることで、いわば「俺たちのようになるなよ」という形で、結果的にミラベルを「暴力の世界」から逃れさせようとしたのです。

更生を諦めた彼らは、これまでもこれからも続く、「暴力」という自分たちのアイデンティティを示しながらも、せめてもの償いとしてミラベルを自分たちや忍者の里の一族から遠ざけ、別れを告げたのです。

ミラベルも、「暗殺の母」の息子たちからのリンチに一切抵抗せず、「暴力」を、
命を張って断固として否定しました。

まとめ


以上のように、どんな外圧、誘惑にも気圧されないという強い意志が、本人と支援者の両方になければ更生は成功し得ないことをリアリティを持って描いたのが、今回の話なのだと思います。

そして、

ミラベルにとって、暴力とは無縁の服職人としての生活がセカンドライフであり、

「暗殺の母」の息子たちにとって、ミラベルがいなくなった世界でそれでもなお裏稼業を続ける生活がセカンドライフなのです。

ある意味「気まま」でもなく「謳歌」してもいない過酷なセカンドライフであり、完全に「なろう系」ではなく、もはや「なりたい系」の作品であると言えますが、こうしたタイトル詐欺がこの漫画の醍醐味であり、「チー付与」の本質なのです。

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