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【書評】最高のがん治療 No.2
がん治療法において、高収入で高学歴な人ほど、騙されやすい。
【はじめに】
どうもです!ほねさんです!
本日も本の要約、書評をしてみたいと思います。題して「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった 最高のがん治療」という本です。とても読みやすく、わかりやすく、一般の方もすぐに理解できるように書かれていた本でした!
著者は以下3人です。
大須賀覚さん(医療データ分析の専門家)
勝俣範之さん(がん治療に特化した腫瘍内科医)
津川友介さん(新薬開発の専門家)
今や日本人の2人に1人はがんに罹る時代です。がんによる死因で亡くなる方も多いですし、時々有名人ががんに罹って亡くなった、というニュースもよく見かけます。
一言で「がん」といっても種類はたくさんあり、罹る「がん」の種類によって治療法も千差万別です。そしてここが問題なのですが・・・。「がん」と宣告されると、今でも多くの方が「死の病」と過剰に怖がり、冷静さを失い、正しい判断ができなくなる傾向があると思います。
そんな状態に陥ったときに狙われるのが、この本で書かれている「トンデモ医療」の誘惑です。心が弱りきった時に「辛い抗がん剤治療のような副作用はありません!この治療法ならあなたのがんは完治できます!」なんて言われたら、藁にもすがる思いで本当にすがりついてしまう。
しかし多くの自由診療(国が認めていない保険外の診療)は普通に数百万の高額な治療費がかかり、すべての自由診療がそうだとはいえませんが、科学的根拠が薄いことが多いです。例えば以下の3つの治療法について、皆様は聞いたことがないでしょうか??
1.がん細胞は糖質をエネルギー源にするため、糖質を摂取しなければがんは小さくなる。
2.にんじんジュースには抗がん作用がある物質が豊富に含まれているので、がんを治す効果がある。
3.オゾン療法(血液クレンジング)はがんの予防・再発防止に有効
これら3つの治療法は残念ながらがんを治す効果はありません。百万歩譲ってもし効果があるとしたら、とっくに世界中の研究者が調べ尽くして、有効な治療法として確立され、世界中でその治療実施されているとのことで、これにはかなり納得です。
根拠が乏しいから、目新しくインパクトのある情報を流して目を引き、判断の弱っている患者さんや家族を標的にし、食い物にするという信じがたいことが世界中で起こっているといいます。
前置きが長くなりました!以上を踏まえて、この本の要約の目的は以下2つです。
【この本の要約の目的】
1.不幸にもがんになったときに最善の治療を受けることができるように
2.世にはびこる詐欺まがいのトンデモ医療に騙されないように、正しいがん治療の知識をつけること
筆者の表現を借りれば、この本の目的は「情報のワクチン」だといいます。33歳で精巣腫瘍を患い、36歳で再発し、この本で謳う「最高の治療」=「標準治療」をこの身体で身を持って受けて、今は元気に暮らしている、わたくしが要約してまいります。ぜひお付き合いいただけたらと思います!
【どんな人にオススメ】
★がん患者本人様やそのご家族様 ⇒ 特にオススメです
・がんのことをより詳しく知りたい方
・どんながん治療が今有効なのか知りたい方
・トンデモ医療に騙されたくない方
・がんにならないための予防が気になる方
どれか一つでも当てはまれば一読の価値はあると思います。
【この本の結論】
最高の治療方法は「標準治療」である。「標準治療」は名前こそスタンダードという意味に捉えられがちだが、「最高の治療法」と言い換えても差し支えない。「標準治療」とは手術、放射線治療、抗がん剤治療のことである。
3つの「標準治療」が治療法として確立されるまでのプロセスを理解すれば、これらの治療法が現時点で最高であることがよく分かる。がんは種類によって治療法は異なり、がん治療において大事なことは、早期に発見し、手術をして適切な薬や放射線の治療を受けることである。
このような知識を身につけることで、世にはびこっている詐欺まがいの「トンデモ医療」に騙されないようにすることが大事である。
そこでここでは以下2つのポイントに絞って解説していきます。
1.最高のがん治療とは?
2.トンデモ医療を見破るコツ
ではいきましょう!
【1.最高のがん治療とは?】
副題にもある通り、「世界中の医学研究を徹底的に比較して」、現時点での最高のがん治療というのは「標準治療」=手術、放射線治療、抗がん剤治療になります。
まあ言ってしまえば目新しさのない内容というか、至極まっとうなことですね。この本の1章は「最高のがん治療はどのように決められるのか」というタイトルです。個人的な意見ですが、この章を読むだけで、もうこの本の趣旨の8割方はおさえた!と言っても過言ではないとも思うほど、重要だと感じます。
先の標準治療が確立されるまでのプロセスが事細かに示されており、まさにスーパーエリートの治療法なのだと理解することができます。では解説していきます。
標準治療=保険適用の治療法は、確率的には1/10000という超狭き門をくぐり抜けた治療法でございます。なぜ最高なのかと申し上げれば、効果があるかどうかを徹底的に調べ抜かれているからです。
そして全世界の病院で使われるようになっています。例えば私が患った精巣腫瘍は、放射線治療か抗がん剤治療によって、99%以上の確率で治ります。私は日本で受けましたが、国が変わってもほぼ同じ治療を受けることができたでしょう。
以下簡単にプロセスを紹介します。1万個の新薬があったとしてどのようにふるいにかけられるのか?
プロセス①(基礎研究) マウスなどに試して少しでも可能性があるかどうか調べる 1万個のうち残るのは29個
プロセス②(臨床試験フェーズⅠ) 人間に毒性がないかどうか調べる 残る候補は14個
プロセス③(臨床試験フェーズⅡ) 少人数で試してみて、効果があるかどうかを調べる 残る候補は3個
プロセス④(臨床試験フェーズⅢ) 現時点でいちばん有効な治療法と比較して優れているかどうか調べる 最終的に有効なのは1万個に1個のみ!
この選抜プロセスでは「ランダム化比較試験」という、エビデンスレベルで、最も上位の研究方法が使われるそうです。
上位にいけばいくほど、「バイアス」=「偏見」が取り除かれます。専門家の意見、というのはエビデンスレベルで言えば一番下位である、というのも個人的には興味深かったです。
この知識を知っていれば、「○○の食品をマウスに食べさせたら、がんが半分に縮小した」といった、一見科学的でよさそうな治療法も、選抜プロセスのプロセス①を突破したに過ぎない、ということがわかりますね。
人間に効くかどうかはわかりませんし、大規模なランダム化比較試験が行われていない以上、科学的根拠がある、とは言い難いことがわかります。
【2.トンデモ医療を見破るコツ】
「白衣を着た詐欺師」
こんな表現を聞いたことがあります。すなわち、科学的根拠が全くない治療法を、さも根拠があるように医学データを改竄し、インパクトのある斬新なフレーズを使用して宣伝し、心の弱りきった患者や家族を食い物にするという輩のことですね。
こうした「トンデモ医療」に引っかかないようにしていきたいものです。そこでトンデモ医療に引っかからないためのコツを以下に列挙してみましょう。
1.「どのがんにも効きます!」という謳い文句はありえないことを知る。(どのがんにも効く治療法など存在しない)
2.「○○を食べたらがんが完治した!」というように一人二人程度の個別の治療成績を誇張しているのは要注意。
3.「免疫力アップ」という言葉に騙されない。免疫細胞は確かに大事だが、そもそも自分の免疫細胞では倒せないのでがんは増殖している。
4.信頼できる医師は標準治療を推薦している医師である。
1のところで書きましたように、その治療法が数百人規模の治療データに基にしているかどうかを確認することは非常に大事ですね。書店に行けば「がんが消えた!」みたいな本がズラリと並んでいますが、個別の治療成績は再現性に乏しいと捉えるべきです。(たぶん参考程度に自分の身体で試してみて効果を検証するスタンスが正しいと思います)
また「がんは個体差がある」「正しい情報ほど地味であり、正しくない情報ほど目につきやすく誇張されやすい」ことも知っておくべきです。
何も知らないことほど危ないことはないと考えます。自分の身を守るためにも、大切な家族を守るためにも、ある程度「がん治療」における知識を身に着けていくことは非常に大事だと思います。
【終わりに】
今回は「最高のがん治療」という本の要約を行ってまいりました!至極まっとうな、正統派な本だと感じました。私自身が標準治療の一つである、抗がん剤治療にて命が助かったことも踏まえ、個人的にとても納得ができる内容の多い本でした。
今回の要約は1.不幸にもがんになったときに最善の治療を受けることができるように 2.世にはびこる詐欺まがいのトンデモ医療に騙されないように、正しいがん治療の知識をつけること の2つの観点より要約をしています。当然すべてを紹介しきれていません。この書評記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひ本を手にとって読んでみてください。
ただ一方で、最高のがん治療であるスーパーエリートな標準治療でも、救えない命もあることも事実です。最高だからといって100%すべてのがん患者を救うことはできません。
人の体は複雑怪奇。まだ未知の領域のほうが圧倒的に多いと言います。抗がん剤の全く効かないがんも存在するくらいです。
そして抗がん剤治療に関して言うならば、正常な細胞までも攻撃し、副作用が強すぎるという欠点もあります。私も相当に苦しめられました・・・。少しでも副作用に苦しまないでがんが克服できるような治療法が確立されることを願ってやみません。
免疫治療は怪しいものも多いですが、世のために人のために日夜真面目に研究している研究者もたくさんおられますから、がん治療がもっと進歩することを強く期待します。
この本は個別のがんの治療法を詳しく解説した本ではありません。「がん」とわかったら標準治療を受けること、トンデモ医療に引っかからないようにすること、を目的に書かれた本だと思います。
この書評記事を少しでもお役に立てられたら幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!