茶の木を育てる 2
茶の木を育てる のつづきになります。
前記事で大切なのは
・現代の茶は品種毎植えている、品種は100種以上が登録されている
・昔は種から植えたので、茶園は一本ずつ別々の香味の品種の集合体のような状態だった。今は品種と区別して実生 みしょう とか 在来と呼ぶ
・茶の木は他の果樹と違い実ではなく葉を摘む
これを踏まえて続けます。
日本茶は茶の木の葉を摘み、蒸して乾燥をして造っていく。
木の立場からすると普葉で光合成をして養分を蓄えて生きていくので、葉がなくなるというのは生命維持の視点ではかなりの負担となる。茶は単年の作物ではないので本当なら来年も再来年も生きていけるが、人間が葉を搾取すると木は死んでしまう。
みかんやりんごの場合、そもそも果実を実らせるのは実を動物に食べさせ種を運ばせるためだ。つまり生命維持に実をつける事が組み込まれている。茶の木にとって葉を摘まれるのは生命維持のシステム外の事なのでストレス以外の何者でもない。たまたま茶の木は生命力に溢れているので葉の摘み過ぎで枯れることはあまりないとはいえ、その点は他の果樹と大きく違う。
具体的に何が変わるかというと、肥料や農薬といった人間が樹木に対して行う行為が変わってくる。野菜や果樹を育てる肥料は主に N・P・K 窒素、リン酸、カリ で構成される。近年果物同様に野菜でも糖度が品質の目安として用いられるが、フルーツのように甘い糖度の高い野菜を造るには上記の3要素がバランスよく大量に投入されることになる。
例えばトマト、11月から6月までの長期栽培のメリーロード種のハウス栽培で10aあたり年間収量15tを目指した場合のNPKはあたり30:30:24(kg) ※農水省 農作物施肥基準より。茶と同じ果樹のナシの場合、幸水種10aあたりの年間の収量2.5-3tでNPKは19:18:16(kg)
一方で茶は10aあたりの年間の収量700kgでNPKは45:21:21(kg)。実際の現場では茶の場合、年間1.5tは収穫していて静岡県の基準ではNPKは54:18:27(kg)。玉露の産地の京都などでは窒素は年間100kg投入しないと美味しくないとの声もある。
上記のように茶は他の作物と比べて畑に投下する肥料が多い作物だ。生命維持に必要な葉を採取する。それを数十年維持するにはこれだけのエネルギーを肥料として投入する必要がある。
その3に続きます。