マーケティング部署がコスト削減対象になる理由は「活動コストの正当性」を説明できていないからだと考えた
こんにちは!クロスコムの本田です。
今回は、マーケティング部署がコスト削減対象になる理由は「活動コストの正当性」を説明できていないからだと考えたので、考察していきます。
※本記事でのマーケティング部署は「売上づくりに関わる活動」として、広告やSNS、リード育成や営業などの新規顧客獲得までの活動に関わる部署を含めます。
1.「活動コストの正当性」は経営判断に必要な情報
企業の売上をつくる活動なのにコスト削減対象?
私も普段は中小零細企業のマーケティング支援として、広告運用やMA配信の代行、その他活動全体のコンサルティングなどを行っています。そして経営層は、財務状況が厳しくなるときのコスト削減の対象として、まずマーケティング部署(特に業務委託先)を挙げてくることを目の当たりにしています。
図1のように、中小企業の経営課題として、2010年から2020年の推移の中で『収益性の向上』が変わらず1位であるにもかかわらず、企業の売上をつくる活動のマーケティング部署が真っ先にコストカット対象になる。一見、矛盾にも見えるような経営判断ですが、実務でマーケティング支援している者としては理解できる理由があるんですよね。
これは、企業のKGI(重要目標達成指標)に対するマーケティング部署の貢献度が定量的に分からないからだと私は考えています。
マーケティング予算の変動で、企業利益はどれほど変わる?
マーケティング部署に課せられる目標指標として、費用対効果(ROI, ROAS)が当てはまるでしょう。費用対効果を最大化するためにマーケティング部署は、広告運用やLP制作、リードへのメール配信など、各担当者が分業して取り組んでいます。
しかしいざ運用状況に目を向けると、それぞれの部署がそれぞれの指標数値を別々で管理しているケースをよく見かけます。顧客導線自体は部署をまたいで1本でつながっているのに、顧客情報の共有はバラバラ。この体制では、KGIが不達だった場合に何が根本的な原因かを特定できず、クリティカルな打ち手が出せなくなるのではないでしょうか。
またこれでは、KGI達成に必要な追加のマーケティング予算が論理的に説明できないですし、逆にマーケティング予算を削減されたとしても、どれだけKGIに影響が出るかも説明できないでしょう。
KGI達成に必要なマーケティングコスト、説明できるか?
マーケティング活動には、ターゲット設定や商品価値の設計などの戦略設計(上流)から、広告運用やリードへのメール配信などの施策運用(下流)まで、幅広い活動が内包されていると私は定義しています。専門的な知識とスキルを扱いながら企業売上の根幹を担う立場として、活動全体を俯瞰して改善していく必要があるというわけです。
しかし、マーケティング担当者へ「今のKPI達成に必要な追加コストはいくらか?」と問うと、なかなか答えられないと思います。これは、プロジェクト当初に見込んでいた達成数値を大幅に下回ってしまっていると、何をどう改善すればいいか分からなくなるからだと考えられます。
そのため、マーケティング部署は、KGI達成への貢献度を見える化して、必要なコストを算出できるようにしなければなりません。それが『活動コストの正当性』を主張することです。
※とはいっても、この「貢献度」を説明するのが難しいんですよね。
2.「活動コストの正当性」が説明できない理由
では、マーケティング部署がこの『活動コストの正当性』をなぜ説明できないのかを考えていきます。
①マーケティング活動を数値管理していないから
最初のステップでありながら、最も多い理由かと個人的に感じているところです。広告のクリック率やLPのコンバージョン率のような媒体側で管理・確認できる集客指標は、おそらくどの企業でも確認していると思います。
しかし、コンバージョンした後のリードに対する指標管理はどうでしょうか?メール開封率や商談化率、顧客生涯価値にサービス継続率など、売上に関わる指標はたくさんあります。これら指標をすべて数値管理して、関与者全員で共通認識をもてているでしょうか?
活動を数値化しなければ、成果を客観的に測定することはできません。「クリック率はかなり高い」「商談数は今月多かった」。さて、こんな説明に対して関与者全員が同じ意味を捉えることができるでしょうか?経営層も同じです。
ITツールで自動集計された指標数値は確認するのに、手動集計が必要な指標数値は、意外とおざなりだったりします。特にKGI達成に必要な指標数値として、顧客生涯価値や商談成約数・率は重要な指標です。これらの指標をもとに、根本的な原因を追究して、どの指標をいくら伸ばせばKGI達成できるかを、数値で証明することが必要になるというわけです。
②データに「示唆」を見出していないから
マーケテイング活動で経営層が見ている指標は、新規顧客数や売上・利益額が考えられます(突き詰めると、売上高営業経常利益率など、会社の財務状況を判断する財務指標を見ています)。つまり結果しか見ていないので、マーケテイング活動の成果は指標数値で判断されることになります。
しかし、戦略に沿って計画的に実行したマーケティング活動の成果が悪かっただけで失敗というのは、少し早計ではないかと私は考えています。最初から狙って目標売上を作ることができればもちろん最高なんですが、正解が分からないかつ経営リソースが限られている中で、アタリをつけながら進んでいく道中で短期間で成果を求められるのは難しいのでは?と考えています。
とは言え「まだまだ道中で、改善されるのはこれからだ!」と一意奮闘しているマーケテイング部署の気持ちとは変わって、経営層は結果しか見てません。事業そして経営を存続させるためには、予算も時間も限られています。そんなときに、抽象的な改善策や精神論のような勢いだけで、果たして経営層は納得するでしょうか?
だからこそ、マーケティング活動で得られたデータから示唆出しするべきだと考えます。ざっくり言うと「この四半期でのマーケティング活動を通して顧客層A・B・Cにリーチしてきました。そして、活動全体の新規獲得数が100人でしたが、そのうち顧客層Aが50人(50%)でした。これはニーズAAという課題に対して商品価値を感じてもらえたのではないかと考えます。したがい、次の四半期では顧客層Aに予算を傾倒してリーチすることで、新規獲得数を150人にすることができると考えます。そのためには予算を横ばいでなければ達成できません」です。
どうでしょうか?即興で作ったのでざっくりになりましたが、数値で明確に表していますし、新規獲得数という売上に直結する指標として明言しているので、経営層も予算を下げられない理由ができたのではないでしょうか。
この提案ができるのは、活動成果から得られたデータを集計し、仮説を立て、検証した結果から導き出した示唆があったからこそです。これはあらゆる活動データを管理している企業なら誰でもできると考えます。
③中間指標を最終目的にしているから
根本的な理由かもしれません。これは集客領域での支援を行っている方や企業に見られやすい傾向だと感じています(ROIや売上を目的に支援されている企業様もいらっしゃるので、一概に言えません…!)。
例えば、デジタル広告運用の領域で言うとどうでしょう。デジタル広告運用では「CV数をいかに増やせるか?」を目的に支援されている企業様も多いと思います。実際にCV数は、マーケティング活動全体のKPI指標(=見込み顧客獲得数)として設定されるケースも多いので、間違ってはいません。
しかし、大局的に捉えるとどうでしょう。マーケテイング活動の目的は売上をつくることです。その売上の構成要素にCV数は含まれるのですが、質の観点から見ると、どんな顧客でもいいからCVするように刺さりやすい訴求をしようでは絶対にいけません。マーケテイング活動の目的を忘れている証拠です。
マーケテイング活動の目的は売上をつくることです。その売上を因数分解したときに、CV数ばかりを追い求めていると、関与者全員の意識にずれが生じ、顧客へ一貫した情報発信ができなくなります。
常にマーケテイング活動全体を大局的に意識しながら、各部署に割り当てられたKPI指標を達成するよう心がけましょう。そのためには、部署内に限らず部署間のコミュニケーションにて目線を揃えることが一歩目ではないでしょうか。
まずは活動全体を数値化することから
以上が、マーケティング部署がコスト削減対象になる理由は「活動コストの正当性」を説明できていないから、そして活動コストの正当性が説明できない理由でした。
普段からなんとなくの計画でなんとなくの活動をしていては、私も含め真っ先にコストカットの対象になり得ます。何よりコストの正当性を示せないと、経営層からの信頼が得られません。そんな関係性で、マーケターは果たして企業を継続的に支援することができるでしょうか?
明日からできることは、まず活動全体を数値化することからでしょう。「見込み顧客に対してメールを●件配信して、開封数が▲件、そのうち商談申込数が■件、、、」。どうでしょうか?データの示唆出しまでは行きませんが、その準備としてまずはデータをつくる活動から始めてみることをお勧めします。
偉そうに言わず、私ももっとデータを活用して価値ある示唆出しができるよう日々精進します。それでは最後に記事の纏めを書いて、終わりにします。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!