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カドブンでインタビュー記事を書かせていただいたので、追記しますパート➂
第32回神保町ブックフェスティバルに早川書房さんが出品する僕の著書にサインをしました。僕自身は行ったことがないのですが、今年は10月26日、27日に開催されるようです!
さて、3作目は『X雨』。著者は沙藤一樹氏。
あらすじはあえて書きません。そして……おすすめ小説として挙げましたが、おすすめもしません。
ある種のジュブナイル小説なのですが、かなり異質です。
沙藤氏は『D-ブリッジ・テープ』という作品で、日本ホラー小説大賞の短編賞を受賞されています。
この受賞作、初読したときの感想は「ふーん」くらいのものでした。ホラー小説なのにまったく怖くなかったからです。
二作目は『プルトニウムと半月』。この作品も初読したときは「へー」くらいしか思いませんでした。
そして三作目の『X雨』。この作品を読んで「な、何これ」と思いました。これは小説なのか、と。そして読み返しましたが、やはり感想は「な、何これ」でした。
全体を通して一つの物語の構成を取ってはいるのですが、著者自身の独白のようなメタ部分もあって、どこからどこまでがフィクションなのかがわからなくなってくるのです。沙藤氏の妄想、とも思えるほどの現実を描いているのかなと思えてきます。
その後で『D-ブリッジ・テープ』と『プルトニウムと半月』を読み返したのですが、初読時とは違ったものが見えてきました。
圧倒的な孤独感です。それも著者自身の。
三作とも、主人公は孤独の中で生きようとする少年少女たちなのですが、そういう物語を描いた小説は少なくありません。
ただ、そういった作品で感じるのはあくまで「登場人物の孤独」です。
言わば、作り物の孤独。
ですが、この沙藤氏の三作は「沙藤氏自身の孤独」を描こうとしているように感じました。
これは計算では書けないものだと思います。
決して商業的に成功した作品ではないと思いますが、これが天才なのか、と当時衝撃を受けました。
ただ、この作品を読んだ全員が僕と同じような感想を持つとは思えません。嫌う可能性も大いにありますし、逆に、影響を受けすぎるのなら、それもメンタルによくないと思います。そういった意味で、おすすめはしません。
がっつり影響を受けた僕は『プルトニウムと半月』の口絵写真にある軍艦島を見に長崎へ行き、近隣の島の漁師さんに頼んで軍艦島まで船を出してもらいました(今は観光船が出ているようです)。
さらには『売国のテロル』という自著内で軍艦島をモチーフにした孤島を登場させました。また行きたいなぁ、軍艦島。
久しぶりに古い小説の棚を漁って楽しかったです!
本に最も勢いがあった時代の小説を、またご紹介するかもしれません。