書評「サピエンス全史」(上巻)客観的で冷静な文章にひそむ、優しさと怒り
遅まきながら「サピエンス全史」を読み始めた。
(ユヴァル・ノア・ハラリ 著、柴田 裕之 訳、河出書房新社)
上下巻からなる大著で、僕はまだ上巻を読み終えたばかりだけど、ひとまずレビューしてみたい。
冒頭の「歴史年表」に、いきなり引きずり込まれる。ここを読むだけでも、著者が専門とするマクロヒストリーの風景を垣間見ることができるのだ。
この歴史年表は、もちろん弥生時代や縄文時代から始まるわけじゃない。エジプト文明やメソポタミア文明から始まるわけでもない。
なんと、ビッグバンから始まるのだ!
う、宇宙の始まりからっすか?
と同時に物質とエネルギーが生まれて物理的現象が始まり、それから原子と分子が生まれて化学的現象が始まったと。
なるほど。
それから地球ができて、生物が生まれて、生物学的現象が始まった。
うんうん、そうだよね。
で、次あたりがホモ・サピエンスの誕生かと思いきや、まず600万年前に「ヒトとチンパンジーの最後の共通の祖先。」
ほ、ほほう?
250万年前にホモ属が進化し、50万年前にネアンデルタール人が進化し・・・
ふむふむ
20万年前にホモ・サピエンスが進化した。
20万年前…
思ったより古いんだな…
そして、7万年前に、ホモ・サピエンスに「認知革命」が起こった、とある。
に、認知革命…??
なにそれ??
そして、一体なんなんだ、この壮大すぎる「年表」は。
* * *
この本は、エジプト文明とかローマ帝国とか、そういう個々の地域や国の歴史が詳しく書いてある本じゃない。
この本は、
・認知革命
・農業革命
・科学革命
という、人類史上の大変革と、
・貨幣
・宗教
・帝国
など、変革をもたらした主要な要素に注目して、ホモ・サピエンスの歴史を、空間的にも時間的にも思いっきり引いた視点から眺めてみようという試みだ。こういう試みを、マクロヒストリーというらしい。
読むにはかなり体力がいる感じの大著だけど、読み進むと著者の肩に乗って壮大な風景を堪能できる。
さらに著者は研究分野の垣根も軽々と越え、考古学や経済学はもちろん、生物学や心理学、そして物理学にすら言及していく。驚異的なまでに多彩な分野から集めた客観的な事実を積み重ねて、僕たちの常識や思い込みを打ち破っていくのだ。一章ごとに、目からウロコが落ちる。
けれど、徹底して客観的で公平なストーリーなのに、文章にリズムがあって、まったく退屈しない。ひとつは著者一流のユーモアのおかげだけど、それだけじゃない。著者の情熱を感じるのだ。特に、差別が生まれた経緯を考察するくだりに、それを感じる。冷静な文章の裏に、人々への優しい思いやりや、差別への怒りが潜んでいるように思う。
全部読んだら、また報告してみたい。
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書き足りないな、と思ったことをこちらに書きたしました。