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「流しのしたの骨」

夜が近づく夕方の、住宅街を歩く帰り道が好きだ。

昼間は静まり返っていた家々に灯りがついて、人の気配がしはじめている。

賑やかしく走り回る子供の足音や、
カチャカチャと陶器の触れ合う音。
チッチッチと鳴ったあとにボンッと点火されるボイラーの音。

それらをBGMに街並みを眺めながら、その家々の中にあるドラマを想像する。
そしてどの家々も朗らかで平穏であるといい、と願わずにはいられないのだ。


流しのしたの骨はそんな帰り道にぴったりのお話だった。全く知らない人の暮らしの中にあるドラマを覗き見させてくれる。
そう。覗いてみたらきっと、私が帰りに眺めている家々も自分の想像なんかでは及ばないような小さなドラマが沢山あるのだ。
ずっと、こっそりひっそりという気持ちで読んだ。
この物語の中に私は入ってはいけない。
これは覗き見だから。

そして読み終わったあともやはり、宮坂家の人々の心が、この話の先も平らかであることを願わずにはいられなかった。


あぁ、そうだ。
我が家の長女が今度小学1年生になるから、
家族写真を撮りに行こう。

読んだ本
「流しのしたの骨」 著:江國香織


最近購入した本
「ことり」著:小川洋子
「元彼の遺言状」著:新川帆立
「鍵のない夢をみる」著:辻村深月

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