記憶の塩のと実際の塩
小さいころに読んだ童話で「イグサのかさ」という話がある。
『イギリスとアイルランドの昔話』というタイトルの児童文学の本に掲載されている、その名の通りイギリスの童話らしい。
ある国の王様が、3人の溺愛している娘に自分のことをどのくらい大切に思っているか尋ねると長女は「自分の命より」次女は「この世界よりも」と鉄を打って響くように答える。王様は満足げに三女へ同じ質問をしたところ「生肉に塩が必要なように、お父様を大切に思っています」と答えた。王様はカンカンに怒り、三女をお城から追い出してしまった。
お城を追い出された三女は、裕福な身なりでは道中危険な目に合うかもしれないと、湖のほとりに茂っていたイグサを編み、コートと帽子のようにしてはおると、きれいな金髪と衣は隠れ、みすぼらしい町娘になった。
町娘のなりで旅を続けていると、隣国のお城にたどり着く。お城で厨房で皿洗いとして働くことになった三女は、お城で過ごすうちに、王子様と恋に落ちる。王子に身分を明かし、盛大な披露宴を開くと、隣国の王様である父も出席していた。しかし父は三女を失ったショックでやせ細り、盲目になってしまっていた。
三女はわざと盲目の父の隣に座り、一切塩を使っていない料理を披露宴で振る舞うことにした。美味しくない料理を食べて困惑している盲目の父にかつて塩に例えて追い出された三女であることを伝えると、父は塩の大切さとともに三女がいかに自分を思っていたかを思い知るのだった。
「塩」と聞いて真っ先に浮かんだのが幼いころに読んだ「イグサのかさ」だったので、懐かしく思い図書館で読み直したのだが少し記憶と違っていた。
わたしの記憶では、三女は追い出された悲しみで、世界中の塩という塩を集め(どうやったかは思い出せない)、塩不足になったおかげで王様と国民が病気になってしまう。そこへ塩を持った三女が現れ、塩の入った美味しいおかゆを王様に食べさせることで、王様は塩と三女の正しさを認識する…というような話だったと思う。
不思議に思って調べていくと、塩をモチーフに似ているようでどこか違っている小話が児童文学として出回っているようだ。そんなこともあるのかと驚いた。
「イグサのかさ」を調べたことで、自分が童話や児童文学が好きだったことを思い出した。また図書館へ通うのも悪くないな。
昔の記憶をたどると思いがけない発見があるものだ。
編集:真央
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