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読書感想『リトル・チルドレン』

“Little Children”
by William Saroyan
『リトル・チルドレン』
ウィリアム・サローヤン 著
吉田ルイ子 訳

サローヤンを憧れの吉田さんが訳した!しかも表紙は和田誠さん!と、1人で図書館の棚の前で興奮して借りてきた。いいの、わかってもらえなくても。
サローヤンが自分と同じアルメニア系移民たちを主人公に書いた短編集。主人公のほとんどは子どもや若い人だが、『農夫の幸せ』『猫』『ピンボール・マシーン十字軍』などは、これはもう大人になった人独特の切なさというか。
クビにされた老婦人を庇って辞職して、高価なバイクを試乗して走り回る『ぼくは礼儀知らずなんかじゃない』や『日曜日の飛行船』はじめ、夏休みに似合う話も多いので、暑い日差しの下、木陰で読むのもいいかもしれない。
吉田さんのあとがきも素敵で、これを読んで、どうして自分があんなにも伊丹さんの訳した『パパ・ユー・アー・クレイジー』が好きなのかわかった気がした。

サローヤンはじめ、アメリカは移民出身である多くの才能によって成り立つ国であり、それぞれのルーツを維持しながら強い国を作り上げてきた。初期入植者たちも移民であり、辛い現実に打ちのめされながらも立ち上がり続けてきたのは、アメリカだけが見せてくれる夢を移民たちが信じたからではないのか。
この短編集が書かれた時代にも偏見や差別や格差はあったのだけど、その中から、サローヤン のような素晴らしい作家を生み出してきた、そこにアメリカの凄さを感じるだけに、彼らには多様性や共存という問題を乗り越えていって欲しいと心から願わずにはいられない。

#夏のオススメ

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