見出し画像

<連載>大型本出版プロジェクト①「大型本って何だ!?」

弊社のウェブメディア「soyogo」との連動企画として、noteでも大型本出版プロジェクトのご紹介を連載いたします。印刷会社の新規事業の内幕を、是非お楽しみください!

鶴の一声で大型本プロジェクト始動

2020年3月某日
「これオモロイだろう!!」
NPC日本印刷株式会社の大型本企画は社長のこの一言から始まりました。
コロナウイルスが猛威を振るい始めた2020年春、
7月から新規事業部に所属することが決まった筆者が社長室に呼ばれたときのことです。

社長が指さす先には、見たことのない大きさの本が。
天地約1メートル、左右60cmほどで、
表紙には『幸福な水夫 木村友祐』と大きく箔押しされています。

『幸福な水夫』は未来社という出版社から2017年に刊行された単行本で、
この大型本は展覧会のために制作した特装本とのこと。
弊社がいつもお世話になっている三菱製紙様からお借りした大切な書籍だといわれ、
おそるおそる表紙に触れてみました。

本を開くと、小説のテキストがしっかりと大きな文字で印刷されています。(すごい!)
「こんな大きい本で、なんか面白い企画ができないか?」
この社長の言葉から、NPC日本印刷の大型本プロジェクトがスタートしたのです。

「そんなでかい本、いったい誰が買うんだ?」という素朴な疑問が頭をもたげながらも、
確かにモノとしての存在感は抜群で、面白いことができそうな気がしたのも事実です。
そもそも、世の中にこんな大きさの本が流通しているのか、
まずはそこから調べることになりました。

誰が何の目的で? とにかくすごい迫力!
ドイツ製の大型本SUMO BOOK

2020年6月某日
いろいろと調べていく中で、銀座蔦屋書店に大型本があるらしい、
という情報を聞きつけ、早速足を運んでみることに。
向かった先は銀座三越のすぐ近くにそびえたつGINZA SIXです。

この建物の6階にある銀座蔦屋書店はさすがに独特の品ぞろえで、
書棚を見ているだけでとても楽しい。
お目当ての大型本コーナーは、アート関連の書棚の隣にありました。
広々とした空間に7~8点の大型書籍が展示されており、店員さんにお声がけすると本に触れさせてもらえます。

とにかく大きいので、ページをめくるのも大変でやや緊張。
ポスターサイズの写真が目の前に次々と展開するのはなかなかの迫力です。
そして、このコーナーに並んでいる大型本の多くが、TASCHEN(タッシェン)という版元から出版されていることに気が付きました。

TASCHENは1980年に設立されたドイツの出版社です。
アートブックをはじめとして、さまざまな書籍を刊行している会社ですが、
このTASCHENに「SUMO BOOK」という大型本レーベルがあります。
約B2サイズ(縦横約70×50cm)という巨大書籍で、
「SUMO」は日本の「相撲」から取られており、大きさの代名詞として使われているようです。

有名なのは、写真家ヘルムート・ニュートンの巨大写真集『Helmut Newton’s SUMO』。
直筆サイン入りで、1冊あたりなんと約160万円の値がついています。

蔦屋書店の情報によると──
「写真集に登場した100人以上のセレブリティからの直筆サインを集めた伝説のSUMOエディション#1は、20世紀で最も高価な書籍として2000年4月6日ベルリンのオークションにおいて、620,000ドイツマルク(当時:約3300万円)で落札された」
とのこと。20年以上も前に、海外では大型本の話題で盛り上がっていたようです。

現在日本では蔦屋書店が「BIG BOOK」、小学館が「SUMO本」というレーベルとして、やはりB2サイズの大型本シリーズを継続的に刊行中。この2点の大型本についてはまた改めてご紹介したいです。

とにかく、世の中には大型本というジャンルが存在していたわけですが、一般の書店ではなかなかお目にかかることはできないため、おそらく世間にはそこまで知られていないのでは、という印象でした。
価格も大きさも規格外のため、普通の生活をしているとあまり縁がなさそうな商品ではありますが、やはり大きい本というのはそれだけでちょっと面白い。この企画を進めていく中で、大型本のことをもっと多くの人たちに知ってほしいという思いが湧いてきました。

話を銀座蔦屋書店に戻すと‥‥‥、

ページをめくりながら本の迫力に圧倒されている私に、店員さんが丁寧に解説をしてくれます。店員さんの言葉には熱がこもっていて、目の前の大型本がどんどん魅力的に見えてきました。

これはやはり買うべきではないのか。

しかし値段は36万円です。普段本を買うときに、価格が2000円を超えた段階で即断できなくなる私にとって、この金額は想像を超えています。

(このとき、36万円なんて出費はこの企画のプロローグに過ぎなかったことを、私は知る由もありませんでした)

社長は必要なものは買え、と言ってくれていたし、
意外とあっさり経費で落ちるんじゃないか、
落ちなかったら家に置くしかないのか、どう考えても置き場所がないな、
そもそもお金がないな‥‥‥、

と自腹で買う気もないくせに意味のない妄想を巡らしながら、店員さんの話に耳を傾けるふりをします。しかし言葉巧みに口説かれたのか、本気で好きになったのか、記憶が定かではありませんが、気が付いたら「これ買います、うちの社長が」とつぶやいていました。

果たして筆者は無事に大型本を手に入れることができるのか?
次回、わが社にSUMO BOOKがやってきた!‥‥‥ をお届けします!