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<連載>大型本出版プロジェクト②「SUMO BOOKがやってきた」
巨大な段ボールで届いたド迫力のSUMO BOOK
2020年10月某日
さて、銀座蔦屋書店で大型本を購入する決意をしたわけですが、
いろいろあって実際に購入したのは2020年10月です。
ちょっと時間を飛ばして、今回はそのときのお話をします。
経費云々のことを心配していましたが、社長は「是非買おう!」とかなり乗り気で、自身が銀座蔦屋書店に赴き、ドイツTASCHEN社が発行するデイヴィッド・ホックニーのSUMO BOOKを選んでくれました。
デイヴィッド・ホックニーは、1937年生まれの世界的なアーティスト。
ちょうど2023年7月に東京都現代美術館で個展がスタートしたばかりです。
2017年には生誕80周年の回顧展がロンドン、パリ、ニューヨークで開催されており、まさに現代を代表する画家としてSUMO BOOKにふさわしい人物と言えるでしょう。
店頭で目にしたあのホックニーのSUMO BOOKが、ついにやってくる‥‥‥!
納品当日、そわそわと待っているところ、ついに商品が到着しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1690165674723-Vl8o2dkPOE.jpg?width=1200)
届いたのは「HOCKNEY」と印刷された巨大な段ボール。
蓋を開け、社長と一緒に慎重に慎重に書籍を取り出します。
とにかく大きい、そして重い。
![](https://assets.st-note.com/img/1690165700476-MQgc8ClKep.jpg?width=1200)
同梱されているスタンドは自分たちで組み立てて、本体を飾ると完成です。
![](https://assets.st-note.com/img/1690165737417-bSzqX2xTGn.jpg?width=1200)
カラフルな3本脚が特徴的なこのスタンドのデザインは、
プロダクト・デザイナーのマーク・ニューソンが手掛けています。
ホックニーの作品世界と見事にマッチしていて、とにかくおしゃれだしかわいい。(そしてデカい)
飾ってみると、やはりすごい存在感です。
このサイズで画家の作品集を楽しめるというのはかなり贅沢な読書体験で、
改めて、大型本は本の可能性を広げてくれる予感がしました。
これどうやって作ってるの?
本の構造を分析する
しかし、こんな大きい本をどうやってつくるのか?
ただ大きくなっただけでしょ? と思われる方がいるかもしれませんが、
そんな簡単なものではありません。
かなりいろいろなことが計算されて作られている‥‥‥はずです。
本を開くと扉ページにナンバリングがしてあります。
その数字がなんと6011。つまり、素直に解釈すると、この本は6011冊目の商品ということです。
![](https://assets.st-note.com/img/1690165810881-qO10TbETQE.jpg?width=1200)
これだけの数量が作られているのであれば手作業というのは考えにくく、
ドイツには何らかの製本機械が存在しているのかも。
さて、ワクワクしながらページをめくっていきます。
まず目を引くのが本の開きの良さです。
いわゆる上製本の背の綴じ方には
・ホローバック
・タイトバック
・フレキシブルバック
の3種類があります。
ホローバックは、こんな感じで(背と本文の間に空間ができて、開きが良い)
![](https://assets.st-note.com/img/1690165841758-aMICM2jEmQ.jpg?width=1200)
タイトバックは、こんな感じ(背と本文がしっかりと接続していて、やや開きが悪い)
![](https://assets.st-note.com/img/1690165869299-lXTs72mmj8.jpg?width=1200)
そしてこれがフレキシブルバック(背と本文が接続しているけど、開きが良い)
![](https://assets.st-note.com/img/1690165895657-hbc9dtZH7p.jpg?width=1200)
ホックニーのSUMO BOOKはホローバックに近い製本で、とても開きが良いのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1690165926083-SNxWAzymfw.jpg?width=1200)
全体の厚さは約90mm。
表紙には厚さ約10mmの木材らしき素材が入っているのか、
かなり頑丈で、反りもありません。
![](https://assets.st-note.com/img/1690166121955-BwmrJjTuZh.jpg?width=1200)
下の写真の黄色い紙の部分、ここを「見返し」と呼ぶのですが、
表紙と本文を接続する役割を持つ見返しは、通常このように1枚でつながっています。
![](https://assets.st-note.com/img/1690166154753-UM4i0YsdK6.png?width=1200)
SUMO BOOKの見返しは下の写真のように、
真ん中に頑丈な布素材をはさんで、左右の黄色い紙をつなげています。
同系色の色ですが、違いが分かりますでしょうか。
本自体があまりにも巨大で、紙1枚でつなぐには心もとないため、
このような構造になっているのでは、と思われます。
![](https://assets.st-note.com/img/1690166201036-mPQN83E9b6.jpg?width=1200)
さらに表紙の構造はどうなっているかというと、
通常、上製本の表紙というのは、このように1枚の紙で芯材を包んでいるのですが、
![](https://assets.st-note.com/img/1690166228917-k2KzaOfDI8.jpg?width=1200)
SUMO BOOKの表紙は完全にパーツが分かれており、表紙の芯材(黄色の部分)の角は丁寧に丸みを帯びるように削られています。いわゆるドイツ装という製本に近いですが、これも巨大サイズに対応するための工夫かもしれません。
![](https://assets.st-note.com/img/1690166259156-2nyomKW4Gf.jpg?width=1200)
そして印刷は全体的に美しく、現物との違いがどの程度あるのかは分かりませんが、
絵具の細かい隆起等が再現されており、この距離で鑑賞しているとやはり迫力があります。
ページ数は約500。本文の紙も分厚くて書籍全体がとにかく重たい。大人一人でも持つのが大変です。
![](https://assets.st-note.com/img/1690166300335-R2MtlsTxjg.jpg?width=1200)
‥‥‥と、細かいことを挙げていくといろいろあるのですが、
ざっくりとSUMO BOOKの構造をご紹介しました。
こうして目の前に存在するのですから、大型本の制作は可能なわけです。
とはいえ、テーマをどうするのか、印刷の選択肢は何がベストなのか、
こんな難易度の高そうな製本はどこがやってくれるのか‥‥‥、と課題は山積みです。
様々なことが複合的に絡み合ってくるので考えることはいろいろとありますが、何はともあれ、弊社で制作する大型本のテーマを何にするのか‥‥‥というのがもっとも大事です。
なぜ大型本でなくてはならないのか? 大型本にふさわしいテーマは何なのか?
たくさんの案が出ては消え、しばらく試行錯誤を繰り返しました。
次回、大型本のテーマを決めよう! をお届けします!