世界にひとつの巨大スケッチブック -3-
背を固める
現代アート作家・井田幸昌さんのために、
ブックアーティストの太田泰友さんとつくりあげる世界にひとつの大型スケッチブック。
本文の形ができあがったので、続いては背を固めていきます。
木の板で挟んだ本文に重しを載せて、
太田さんがでんぷん糊を取り出しました。
まずはこの糊を、背の部分に塗っていくのです。
刷毛を使って何重にも塗布します。
塗り残しがないように、丁寧に丁寧に、塗っていきます。
背を固めるだけでもかなりの時間と労力がかかるのです。
ひと通り糊を塗り終えたら、続いてボンドを塗布していきます。
背の部分に糊とボンドがしっかりと塗られた大型スケッチブックの本体。
重しをこんな感じで載せて、乾くのを待ちます。
この日はこれにて終了!
裁つ
しっかりと固まった本文ですが、背以外の三方をきれいに断裁する必要があります。この工程は断裁機が必要なので、埼玉の製本会社・栄久堂さんにお願いすることになりました。
断裁機の前に到着したスケッチブック本体。
太田さんと栄久堂さんで寸法を確認しあい、いよいよ断裁機へ。
もし手元がくるって切る場所を間違えたらどうしよう・・・、
と、いらぬ心配をしながら見守っていました。
機械の上から刃が降りてきて、一瞬にして本文の束が断裁されます。
これは見ていてとても気持ちがいい。
慎重に、本体を動かしながら三方を断裁していきます。
そして、とても美しい側面に仕上がりました!
かなり短い時間ではありましたが、見ていてちょっと緊張する工程ではありました。
背に施す
三方がきれいに断たれ、背もしっかりと固まったところで、
本文と表紙を接続するための仕掛けを、背に施していきます。
まずは「花布(はなぎれ)」の装飾から。
「花布」とは、背の天地に貼り付けられた布のことです。
上の写真をご覧ください。背の部分に赤色の布が見えますが、お分かりになりますでしょうか。本来は本を丈夫にするために縫い付けられた色糸で、同時に装飾の役割も果たしていたらしいです。現在の製本では装飾目的で色糸に似せた布が天地に貼り付けられています。書籍に合わせて様々な色が選べるので、少し豪華な上製本をつくるときには、花布を選ぶのも楽しい工程のひとつです。
今回のスケッチブックは全体が真っ白なので、
表紙と同じクロス素材を用いて花布をつくります。
続いて、「クータ」と呼ばれる筒状の仕掛けを施します。
この「クータ」を背に貼ると、表紙と本文の背の間に空間ができて、
構造的に本の開きが良くなります。
これで背の部分の完成です。
外側からは見えづらい部分ですが、細部まで緻密に計算されて貼り込まれた花布とクータ。とても美しい仕上がりとなりました!
次はいよいよ、表紙の制作に入ります!
(世界にひとつの巨大スケッチブック 第3回 おわり)