無印良品銀座にてイベント開催 その2
「大きい本の工房 hon ami」は、6/27に無印良品銀座にてイベントを行いました。そのご報告の第2弾です。
ブックアーティスト・太田泰友さんにご自身の2つの作品について解説していただいたのですが、1つ目の作品は「その1」でご紹介しましたので、ぜひお読みください!
2つ目の作品タイトルは「Die Forelle」。魚の「鱒」のドイツ語表記です。
題材となっているのは、フランツ・シューベルトの歌曲『鱒』の詩です。
(ちなみに、この詩を書いたのは18世紀の詩人であり音楽家のシューバルトという人物)
まずは、この作品の形状に注目してみましょう。
中国の竹簡にヒントを得たこの作品は、
竹ではなく紙でできた短冊が糸でつながっています。
竹簡は短冊の連なりが1枚で完結していますが、
「Die Forelle」はそれが何枚も重なって、側面が背として綴じられています。1枚1枚を「めくる」という動作が発生してページの概念が生まれ、いわゆる「本」の形になっているのですね。
これらの紙の短冊たちは、「本」の形態を手に入れることによって、
とても面白い動きをし始めます。
こんなふうに自立して、1枚1枚がうねうねと不思議な形に変化するのです。ドイツの展示会では「まるで魚みたいだ!」という反応があったようですが、確かに、端を持ってブラブラさせると、本全体がゆらゆらと揺れて、
まるで水中を漂う魚のようです。
前回ご紹介した作品は「レモン」がモチーフとなっていましたが、
今回のモチーフは「水」です。
水に関係するものを本に移し替えるとどうなるのか、
その題材として選ばれたのがシューベルトの「鱒」だったというわけです。
さらに、この作品ではテキストについても面白い実験がなされています。
竹簡は中国発祥なので文字は縦書きとなるのですが、
「鱒」の歌詞はドイツ語です。
本来は縦書きに対応しているメディアの中に、
横書きのドイツ語テキストが存在するとどうなるのでしょうか。
ここで本の背文字について面白い話が。
英語は背の上から下に向けて文字が進むのですが、
ドイツ語は下から上に向けて文字が流れているそうです。
このドイツ語の特性を生かして、
「Die Forelle」の中ではテキストが下から上に流れていたり、
短冊をまたいで横に流れていたり、
本そのものの特殊な形状を利用して、文字が自由に表現されているのです。
これもまた、「水」というモチーフにふさわしい、
テキストが本の中で揺らめいているような感覚を味わえます。
この作品も、構造面でも内容面でも、細部まで緻密に設計されており、
ブックアートの面白さが存分に発揮されていると言えると思います。
もっといろんな話を聞きたかったのですが、
時間も限られているのでブックアートのご紹介はこれでおしまいです。
このあと、いよいよ大型本の話に移ります。
大きくなるだけで、普段気にしないような、
本の中のさまざまな構造が見えてきます。
製本も一筋縄ではいきません。
印刷もかなり高度な技術が要求されます。
あらゆる分野のプロフェッショナルの英知を結集してつくられる大型本の魅力とは?
次回、このあたりをご紹介できればと思います!
7/19(金)には、このイベントの第2回が開催されます。
太田さんの新作大型本も公開されますので、
ご興味のある方は、ぜひご参加ください!