思い通りにならない人生
過日、友人達と恒例の深夜の読書会を行った。
今回のテーマは「おわり」どんな本が紹介されるか…という中で私が選んだのは…
『葵の残葉 (文春文庫)』
「おわり」を「尾張」と幕府の終りにかけて本書を選びました。明治維新の光を薩長とするなら、幕府側は影と言えましょう。
尾張徳川に関わる四人の兄弟の人生を描いた本書は、幕府の改革を目指しながらも井伊直弼に邪魔され、藩主を終われた経験がある。尾張藩主 徳川慶勝を中心に描かれます。
会津藩主 松平容保も含め兄弟が袂を分かち、新政府軍と旧幕府軍に分かれ戦いますが…新政府についた慶勝は他の大名を説得したり、家臣を新政府の罠にはめられ殺さなくてはならなくなったりと貧乏くじを引きまくります。新政府への貢献は薩長にも並ぶものですが、名誉だけで維新後は政治に参画できず。結局冷や飯を食べさせられる始末。
Spotifyのコテンラジオ等で長州の活躍は聞いていましたが、慶勝の活動については触れられていません。知れば知るほど、歴史の暗部に消えた隠れた功労者に思いをはせます。
維新後は、元家臣のために奔走、名古屋城の金のシャチホコを天守閣からおろし、家臣へのお金の配給を考える。しかるにシャチホコは、新政府により見世物にされる。家臣たちには北海道への入植の話も出てきます。(それで家臣は苦労するが、慶勝死後の話です。)
貧乏くじを引き、兄弟バラバラになりながらも明治維新まで生き残った人々。四人一緒に収まった写真は喜びも悲しみも超えてきた人間の表情が現れています。責任を背負い生きる不遇な環境であってもリーダとしてあきらめず生きた彼らの葛藤を見ると…
今という平和の時代にいる我々、改めてありがたさを確認できる一冊です。