片岡千恵蔵「赤西蠣太」
約百年も前の日活映画。
伊丹十三の父、万作監督の時代劇。
原作は仙台伊達家の「伊達騒動」を
志賀直哉が小説にしたもの。
伊丹が普通の時代劇では面白くないと、
落語風喜劇に仕立てた笑える作品*。
赤西蠣太は白石の殿様の命を受け、
伊達兵部の悪事を暴くべく屋敷に入る。
密書ができたが江戸に帰る暇をもらうため、
美人の腰元、小波に恋文をしたためる。
ふられたショックでお暇をもらう算段だが、
逆に恋を受け入れられ困った蠣太。
二度目の恋文を落として笑い者となり、
ようやくお暇をもらうが小波が告白して
蠣太が間者だとばれて追っ手が来る。
逃げ切った末に伊達騒動も終結して、
蠣太は小波の元に戻って結婚となる。
ドタバタ騒動も無事にハッピーエンド。
映画の筋はこんなものだが、
蠣太の家には鼠がいてうるさく、
何度も狩りして欲しい猫が登場したり、
千恵蔵の蠣太ののんびり風情も面白く、
二人目役の原田甲斐の二枚目ぶりもいい。
変幻自在の役者ぶりに拍手が湧くだろう。
冒頭シーンではショパンの「雨だれ」、
最後の恋が結ばれるシーンは
ワーグナーの「結婚行進曲」が流れる。
あの頃にこんな時代劇があっただろうか。
伊丹万作の奇想天外の映画作りに
原作の志賀直哉が見て絶賛したという。
こんな笑える百年前の時代劇をYouTubeで
見られるなんて、とても幸せなことだ。
*この作品はジャスミン眞理子さんのhttps://note.com/jasminemariko/n/n39d67bcf59ea?from=noticeで知りました。ありがとうございます。