忘れ草
忘れ草が那須の
山の道端に咲いている。
濃い橙色の個性溢れる
強烈な野の花である。
忘れ草は萱草*、
藪萱草や野萱草などの
古い名である。
万葉集で詠まれている。
藪萱草は八重咲の花。
野萱草は一重咲の花。
百合のようなその花に
恋する女性を思わせる。
朝咲いて夕方に蕾み、
翌朝に咲くことがない
たった1日だけの花。
だから忘れ草なのか。
大伴旅人が妻を失い、
その辛さを忘れようと
忘れ草を衣の紐に付け、
堪え忍んだという。
恋しさや憂いを
忘れさせてくれる花。
今は亡き我が愛犬の
骨壺に寄せて活けた。
*萱草はカンゾウ、藪萱草はヤブカンゾウ、野萱草はノカンゾウと読みます。