人としての価値

進学校にいたので
よい大学に入ったあと、
一流企業の社長や重役、
上級公務員や医者や弁護士など、
偉くなった人も多い。
でも本当に立派な人は
少ないように思う。

O先輩はそうした人と違い、
家業を継いだ平凡な人だった。
しかし奥さんを心から愛し、
二人のお嬢さんと仲良く暮らし、
ご近所の人から愛された。
ラグビーが好きで仲間も多く、
ヨットマンでもあった。

優しく温かい人柄で
口数は少なかったけれど、
人を包み込む力があった。
半径3m以内の人を
幸せにできる人だった。
肩書きも何もなかったけれど、
素晴らしい人だった。

O先輩が亡くなってから
どんどんと思い出が蘇る。
楕円球を一緒に追い回し、
心のこもったパスをもらった。
夢破れて疲れきったときに、
酒を飲み笑顔にしてもらった。
恩人であり兄のような人だった。

O先輩のことをこれからも
何かにつけ思い出すのだろう。
僕にはそうした人が何人かいる。
死んでからも僕の心に
いつまでもいつまでも残る人。
そうした人こそ人としての
価値がある人なのだと思う。
そんな人に自分もなりたい。