「Tom Trabert’s Blues」を歌う

珈琲の香り漂うカフェ
「フットプリンツ」で、
トム・ウェイツの
しわがれ声が流れていた。

この「酔いどれ詩人」の歌は
どれも心に染みわたるけれど、
「トム・トラヴァーツ・ブルース」は
心臓を鷲掴みにされ揺さぶられる。

♬ 疲れ果ててケガをしちまった
月が出てたからなんかじゃない
今になってツケが回ってきたんだ
明日会おうよ、なあフランク
2ドルばかり貸してくれよ ♬

そんなふうに歌い出してから
さすらいの放浪人を歌った
オーストラリア人の愛国歌
「ワルチングマチルダ」が
喉の奥から絞り出されるのだ。

♬ To go waltzing Mathilda.
waltzing Mathilda.
You’ll go waltzing Mathilda.with me.
放浪の旅に出るんだ
寝袋を背負ってさすらうんだ
お前は俺と一緒に旅に出るんだ ♬

「トム・トラヴァーツ・ブルース」は
牢獄で死んだ友人への弔いの曲だ。
牢から出て俺と一緒に旅に出るんだと。
♬ To go waltzing Mathilda.
waltzing Mathilda.
You’ll go waltzing Mathilda.with me. ♬

この3フレーズが頭に残り、
いつしか口ずさむことになるのだ。