幸せは黙ることにある
「幸福は沈黙にある」と
ボードレールは言った。
彼が『旅への誘い』の
散文詩でそう書いたわけは
詩を読んでもよくわからない。
けれどもその言葉は
深く心の中に残ってしまう。
なぜなら喋ることがどれほど
幸せを逃してしまうか、
それを知っているからだ。
喋れば嘆きや愚痴になり、
非難や中傷や誹謗にもなり、
人を傷つけ自分が傷つき、
一言も口に出さなければ
良かったと後悔するのだ。
「幸福は沈黙にある」
言いたくても黙っていたら
幸せは逃げては行かなかった。
「不幸は話すことにある」
話すことはとても危険なのだ。
言いたいときこそ黙る。
一切を封じ込むこと。
話したいときこそ
口を閉じることなのである。
何も語らないことなのだ。