ナガヅエエソがもたらしたもの
子供の頃に見た一枚の写真。
ナガヅエエソという深海魚が
砂の上に3つのエラを立てて、
じっと獲物が来るのを待っている。
伊藤昌平さんが見たのは
そんな海の底の魚の写真だった。
人間が撮った写真ではなかった。
水中ロボットが撮ったものだった。
伊藤さんはそれを知っていつか
「ロボットで深海魚を撮りたい」
そう思うようになったのである。
「だったら自分でつくってみるか」
筑波大学工学システムで勉強、
自分で水中ドローンを開発するのだ。
いまやベンチャー企業の社長、
理知的で爽やかな笑顔が魅力の35歳。
子供の頃の夢を叶えるなんて
なんてロマンチックな人なのだろう。
水中ドローンの用途は
際限ないほどの可能性があるだろう。
たった一枚の写真、
たった一匹の魚がもたらしたものは、
これからの人類の役に立つはず。
ぜひとも応援したいものだ。
それにしてもエガヅエエソがいい。
漢字で書けば長杖鱛になるだろう。
謎めいたトカゲ魚である。
剥製があれば手に入れたいし、
水槽で飼えるなら飼ってみたい。
伊藤さんの気持ちがよくわかるのだ。