ホワイトデー危機一髪

ホワイトデーの昨日の朝、
妻が誰に言うとでもなく、
「チョコレートが食べたいな」と
のたまわったのである。

彼女は大のチョコ好きである。
しかも先月のバレンタインデーに
僕のだけでなくしっかり自分の
チョコまで買って頬張っていた。

仕方なくチョコを買うかと思うが、
あいにく我が家の近くには
ショコラティエがいない。
つまりチョコ専門店がないのだ。

遠方まで行くのは大変だ。
どうするかと思案していたら、
「チョコよりケーキがいい」と
またまたのたまわったのである。

そこで近所のケーキ屋に出向く。
店はやたらと男の客が多い。
ショーウインドウにケーキはあるが、
チョコレートケーキは残りひとつ。

前の客が買ってしまうのではと
ハラハラドキドキしてみていると、
イチゴやフルーツの乗った
綺麗なケーキばかりを選んだ。

「次のお客様、何になさいます?」
店員の呼び声に笑顔を作って答える。
「そこのチョコレートケーキを」と
目の前のテリーヌショコラを指した。

なんとか最後の1つを無事に
ゲットしてほっと胸を撫で下ろす。
考えて見れば痺れるような危機一髪。
山椒ではなかったけどピンクペッパーの
乗った痺れるチョコケーキだった。