雨の中を歩く
梅雨入りした昨日は
雨は降らなかった。
今日は朝から雨が降り
コンクリートの道路を
黒く湿らせている。
髪を切りに家を出て
床屋まで傘を刺して
ぼそぼそと歩いた。
雨の匂いが辺りに漂い、
鬱陶しさが増した。
床屋は臨時休業だった。
急に汗が湧き出て、
無精髪を湿らせた。
痒くもないのに
髪をかきむしった。
やり場のない気持ちを
床屋の店先に残して
来た道を引き返した。
怠惰な精神はさらに
アンニュイになった。
ふうと無意味な
溜め息がでた。
目の前がくらっと揺れ、
雨の滴だけが見えた。
黒い道に跳ねずに
黙って沈み込む雨が。