「フロイデ」
ベートーヴェンの第九に
7年ぶりに参加することにした。
そう、合唱である。
亡き岩城宏之さんの解説を読み、
急に歌いたくなったのだ。
世の中には戦争もあるし、
平和を願うこの歌を歌いたい、
歌わねばならないと思ったのだ。
男声合唱「フロイデ」で始まり、
「ブリューデル」人類皆兄弟。
初めての練習があった。
歌い出して忘れていたことを
どんどんと思い出す。
小さな頃に自転車に乗ったように、
自然にドイツ語で歌えてしまう。
僕はテノール、高い音が大変。
隣のソプラノはもっと大変。
「フォル・ゴット」の繰り返し、
最後のフェルマータで
前列のご婦人の目が見開く。
口とともに限りなく開き、
目の玉が飛び出しそう。
こめかみに血管が浮き出て、
鬼の形相で歌い上げている。
神様も驚くに違いない。
久しぶりに大きな声で
歌いきって爽快そのもの。
やっぱり歌はいい。
それもベートーヴェンの
第九ならこれ以上のものはない。
まさに「喜びの歌」だ。