ハスキルとグリュミオー

何と哀しく切ない旋律なのだろう、
ピアノとヴァイオリンが奏でる
モーツァルトのソナタ第28番ホ短調。
1778年パリで母の死に出会った
モーツアルトの悲しみが曲となった。

繊細で透明で耽美な音色の
クララ・ハスキルのピアノ。
どこまでも綺麗で美しい
アルテュール・グリュミューの
確かなヴァイオリンの調べ。

2章立ての短い曲は
第1章の冒頭のピアノと
ヴァイオリンのユニゾンで始まる。
印象的な短調のメロディは
聴く者の心に染み込んでいく。

続く第2章はピアノの
抒情溢れる旋律から始まり、
ヴァイオリンが同じ旋律を
追いかけていく展開。
二人の心情が高まっていく。

ハスキルとグリュミオーの
デュオはモーツァルトの
その他のソナタも素晴らしい。
軽やかで楽しげな多くの長調の調べ。
でも28番は希少な短調だからこそ、
余計に哀しく響くのだ。