「空たち」とは?

「空」はフランス語でcielである。
ランボオの詩「いちばん高い塔の歌」に
cieuxという単語が出てくる。
これは空の複数「空たち」である。
「空たち」とは何だろうか?

ぼくは太陽や雲や虹があったり、
月や星などいろいろなものがある
空のことをいうのかなと思った。
しかし英語にもskyの複数があり、
調べるとぼくの解釈は間違っていた。

英語の辞書にskiesという
skyの複数形の名詞があった。
空の広がりを強調する場合に
しばしば用いられるらしい。
「広がりのある空」だ。

これを知って思い起こすのは
ゴッホが描く空である。
月が輝き、星が瞬く夜空。
夜空の絵は多くあるが、
「空たち」は昼間の絵だった。

この絵のタイトルは
“Champ sous des cieux d‘orange”*
「荒れ模様の空たちの麦畑」。
ゴッホが最後に暮らした街、
オーヴェル・シュル・オワーズの絵。

今もこの絵と同じ麦畑の景色がある。
大空の下に麦畑が広がっている。
この絵の暗い空は大きく広がっていて、
今にも強い雨が降り、嵐が来そうだ。
草原にでも行き、広い空に出会ったら
複数で呼びかけてみたい。「空たち」と。

*この絵はhttps://www.repro-tableaux.com/a/vincent-van-gogh/champ-sous-des-cieux-d-orage.htmlで見られます。街の模様は https://4travel.jp/travelogue/10662864#google_vignetteで。