桜、湯飲みに舞う

かつて十年以上も
毎年花見会を開いた。
たくさんの桜の木の、
一番太い幹で垂れた
枝のある花の下で、
たくさんの友人たちと
飲んで歌い笑いあった。

朝早く妻と桜の下に
青いシートを張り巡らし、
そこで寝転び番をして、
本を読みながら皆を待った。
昼前になると各人それぞれ
酒や料理やつまみをさげ、
家族連れでやってきた。

花を眺めながら酒を飲み、
すぐに和んで宴もたけなわ。
ベンが音の出ない手拍子で
山登りでの歌を歌い出し、
イトウが写真を撮り出す。
マツダが遅咲きの結婚をし、
皆で祝福し笑顔の花が咲く。

お花見の酒は日本酒と、
湯飲みで飲み交わした。
宴も終わりにさしかかる頃、
桜の花びらがはらはらと
風に舞って落ちてきた。
その花びらが湯飲みに入る。
嬉しさがじんと込み上げた。

ひらひらと 湯飲みに入る 花見酒  京太郎