町バー「大きな星」

町中華があれば
町バーだってある。
僕の家のそばの
町バーは引き戸で
ラーメン屋のよう。
しかし名前は
「GRAND STAR」、
おいおい大丈夫か、で、
長い間入れなかった。

ここに札幌から来た
友人と入ってみた。
葉巻の匂いが立ちこめ、
薄暗く怪しい雰囲気。
ウヰスキーの瓶が
壁に所狭しとあり、
光に輝いている。
カウンターに腰掛け、
何を飲むか考える。

垂涎のアイラの酒、
ラガヴリンも飲みたいが、
アイリッシュがあるか、
マスターに訊くと
カネマラがあった。
再興された名蒸留所、
アイルランド人が
誇りにしていた
自分たちの酒の1つ。

いつも通りストレートと
チェイサーをお願いする。
出てきた酒の入った
グラスは蓋付きだった。
香りを大事にしている、
それだけで嬉しい。
ふわっと甘やかな香り、
口に含んでみると、
癖がなくとてもスムース。

友人はアイラの銘酒、
彼が昔から好きな
ラフロイグのロック。
2杯目は僕の好きな
ハイランドパークを
やはりロックで飲んだ。
友人とはこの前の
ワインダイニングから
いろんな話をした。

彼が来年オープンする
小さなコンサートホール、
こけら落としの音楽家、
僕は今通う大学の
フランス文学史と今日
行われた期末試験のこと。
来年はどんなことをしたいか、
積もる話は尽きない。
この町バーの名前通り、
「大きな星」を見つけたい。