ヤマガラのおみくじ引き
子供の頃、お祭りや
神社の縁日などで、
小鳥が硬貨をくわえ、
賽銭箱に落とし入れた後、
鈴をがらがらと鳴らし、
お宮の扉を開けて中から
おみくじを取り出すという
見事な芸を見たことがあった。
今ではすっかり見かけないが、
その小鳥はヤマゲラという鳥で、
ピョンピョンと参道を跳んで
主人におみくじを渡して
麻の実をもらったら籠に戻る。
おみくじを引いてもらうのに
お賽銭がいるわけだけど、
夢中になって親にねだった。
野鳥のヤマガラを飼い慣らし、
芸を仕込むというのは
平安時代からあったという。
当時はカルタ取りやつるべ上げ、
那須与一など高度な芸もこなした。
世界でも類を見ない野鳥を使った
日本古来の伝統芸なのである。
日本の伝統文化と言ってもいい。
しかし今や野鳥の捕獲が禁止され、
すっかり影を潜めてしまったが、
なんとかして日本固有の文化、
ヤマガラの芸を復活させたいもの。
子供時代に触れた驚きや喜びは
人生における貴重な体験である。
ともあれ、文鳥やインコを使った
おみくじ引きは今もあるらしいので、
それを見て我慢するとしようか。