銀の懐中時計

友だちの
べんちゃんは
高校の頃から
懐中時計を
使っていた。

時間を調べるとき
おもむろに
ポケットから
懐中時計を取り出し
蓋を開けて見る。

腕時計を見るより
多少の時間がかかり
目に皺など寄せるから
考え深げな
哲学者の風情がある。

何が起きようが
ゆったりと構えている。
本当はそうではないのに
「悠揚迫らぬ態度」
というものになるのである。

だから腕時計などより
懐中時計を使うのがいい。
それもできれば骨董の
銀製のものがいいのだ。
銀の懐中時計である。