桜景色の桜源郷
いつものように朝早く散歩に出ると、
一日中降った雨で地面が濡れていた。
どんより曇った空の下を歩みを進めると、
近くの小ぶりな公園の脇を通ることに。
桜の樹が多い綺麗な公園なのだが、
さすがに花も散ってしまっただろうと、
そう思って横を見て目を見張った。
公園一面が桜の花で覆われていたのだ。
この世と思えない雪景色のような桜景色。
咲いている桜の樹と散った地面の桜で
公園のすべてが桜色に染まっていたのだ。
桜景色は桃源郷ならず桜源郷だった。
このような桜景色はこれまでの生涯、
ただ一度たりとも見たことがない。
桜色の世界が靄の中にかすんで見えた。
極楽浄土の桜源郷がそこにあった。
公園の中に少しだけ足を踏み入れた。
夢の中にいるような桜景色に包まれる。
感嘆し溜め息が漏れ心が浮遊した。
そのまま呆然と見惚れるばかりだった。