永遠の映画スター

「タムラマサカズです」

口をあまり開かずに

ぼそぼそと自分の名前を言う。

言った後に眉を上げながら

瞬きをニ度三度とする。


左手で右肘を支えて

右手を顎にあてがう。

もしくは右手の親指と

人差指を開いて顎にあてる。

そんな仕草が素敵だった。


クールでニヒルな

眠狂四郎の円月殺法は

痺れるほどのカッコ良さ。

スマートな推理で謎を解く

古畑任三郎は人間味があった。


晩年は声がしわ枯れたが

舞台でなく映画スターだから

問題もなく役の味わいを深める。

まっとうでもの静かなのに

圧倒的な存在感があった。


人の目を真っ直ぐ見て

微笑むとぞくっとする。

甘さと冷たさが同居する

正統な二枚目俳優は

もう二度と現れないだろう。


田村正和さん、

永遠の映画スターとは

あなたのことです。