マイルスとドビュッシー

ドビュッシーの前奏曲集を
心の滴をこぼしていくように奏でる
クラウディオ・アラウのピアノで聴いていた。
この世とは思えない幻想的な世界が繰り広げられる。

長い時間、陶酔してしまったあとで、
第1巻の2曲目の「ヴェール」はモダンジャズ界の帝王、
マイルス・デイヴィスに多大なるインスピレーションを
与えた全音階で作られた曲だと知った。

全音階とは音の幅が等間隔の音階である。
普通の音階とはまったく異なる異次元のメロディとなる。
マイルスはこの音階をDドリアンと呼んだ。
この不思議な音階使いがまったく新しいジャズを誕生させた。

「Kind of Blue」のアルバムは新しいクールジャズの真価である。
その冒頭の曲「SO WHAT」がドビュッシーの前奏曲集の
「ヴェール」をモチーフにつくられたというわけである。
慌てて聴き直すと確かにイントロが「ヴェール」に似ている。

ドビュッシーもこれまでのクラシック音楽を超越したいと
全音階を使った前奏曲集をつくりあげたのだろう。
マイルスもまったく同じだったに違いない。
とは言え彼がクラシックに精通していたとは今さらながら驚いた。

天才は天才を知る。