光の洪水のように突き抜ける「プルチネッラ」が聴きたかった_東京文化会館チェンバーオーケストラ_2024年1月14日
2024年初の演奏会は1月14日(日)、東京文化会館チェンバーオーケストラの「シャイニング・シリーズVol.13」でした。
この日の3曲目に演奏されたストラヴィンスキー「バレエ音楽『プルチネッラ』全曲(歌あり)」は、2019年6月22日に、バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)でおなじみの鈴木雅明さん指揮・紀尾井ホール室内管弦楽団の演奏で聴いたのが初めてでした。
衝撃--という言葉が陳腐に思えるほどの激しい感動を覚え、
「あ、これ、人生が変わった」
と、直感したものです。
ストーリーは、軟派な(失敬!)イタリア男たちが意中の女の子に突拍子もないアイディアでアプロ―チするという、コミカルなトタバタストーリー。
内容にふさわしく華やかでパーン! と光の洪水を浴びるような「序曲」はもちろん、2曲目の「セレナータ『小羊が新鮮な牧草を食べている(テノール)』の、まるで朝霧の中にいるようなちょっぴり切ない躍動感には、全身が震えるほど魅了されました。
紀尾井ホールを出ても感動は冷めず、帰り道にクラウディオ・アバド指揮・ロンドン響版のCDを購入しては朝から晩まで聴き続け、ブックレットに記載された歌詞を見ながら、家族が引くほどご機嫌に、そして延々と繰り返し歌っていたほどでした。
ソプラノ、テノール、バリトンと3人の歌手が必要になるため「全曲(歌あり)」で聴ける機会があまりありません。今回の野平一郎さん指揮の「プルチネッラ」も、それはそれは楽しみにしていました。
あくまでも「個人的な好み」であることを先にお断りしておきますが、私にとっては今回の全体的に真面目で大人しい印象の「プルチネッラ」は、待ち焦がれた音や表現とは少しだけ違うものでした。
テノールの村上敏明さんが歌う2曲目の「セレナータ~」は、遠くを見つめる表情が何かの覚悟を持っているように感じられ、ソプラノの澤江衣里さんによる「アンダンティーノ『もしあなが私を愛してくれないのなら』」は、心から悲しそう……。
全ての曲が少し重々しく感じられ、最後の「アレグロ・アッサイ」が、輝きながらパーン! と突き抜けることもありませんでした。
1曲目のモーツァルト「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K364」についても、私は3楽章の変調するところが、さりげないからこそ胸が締め付けられるようで大好きなので、あまり重く表現せず、もっとキラキラしていてほしかった……と、期待が大きかったからこそ、生意気なことを思った次第です。
もちろん、しっとりした表現がお好みの方もいらっしゃるので、あくまでも私の好みの話です。いろいろな演出に触れる好機を持てたことに感謝をこめて。
***
##関連記事
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?