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今は大したことない人


生きてきた中で1番好きになった他人がいた。
同じサークルの男の子で、酔った勢いで仲良くなった。普段は男の子に話しかけるなんてできないわたしが、自分から絡んで仲良くなった男の子。

あの頃は特別に感じていた。先輩とも仲が良くて、同期ともみんなと仲が良くて、話が上手くて、笑顔が可愛い。特別な人。

今考えれば、大したことないひと。

ただ、あんなに短期間で仲良くなったのは初めてだったから。
別にそこまで特別な人でもない。
よくいる人だった。
なのに、私には彼しかいないように見えてしまった。理解者は彼だけなのだと。勘違いをしてしまってからは早かった。
彼のいない世界は絶望にすら感じた。
慣れてしまえば、それが当たり前なのに。

大したことない人。
わたしの中で大きくなり続けた人。
わたしをいつも肯定してくれた人。
寂しい夜をひとつ残らず摘んでくれた人。
耐えられないような重い石を軽々とどかしてくれた人。

わたしの手を誰もよりも強く掴んで、
暗い宇宙の中でわたしを離したひと。

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