気まぐれなアメリカのデザイントレンド解説:マッチングアプリの電車広告から見る、ニューヨークの出会い事情
前職が広告代理店なのもあって、電車の車内や、街中の広告や映像はついつい見てしまう癖があります。日本も含めて、広告が面白いのは、その場所や人、文化が垣間見えること。
特にNYは日本だと掲出されない業種やちょっとセンシティブな製品も堂々と公の場に出ていたりします。そのひとつが、今や主流となっている出会い系アプリなのかなと思っています。
私が気になったポイントはこの3つ。
アプリのデザインがおしゃれ
日本ではアプリを使ったことがないので、どういったデザインかは実はあまり詳しくないのだけれども、こちらのアプリはデザインスクールのUIUXの授業の題材になるぐらい、とても整っています。何よりもフォントの選択が繊細で、見やすい。
こちらは人気アプリHinge。
基本的にはモノクロ調で、セリフ体がメイン。アプリの画面もスペースが大きく取られていて、見やすかったと思います。
あとは、日本でもお馴染みのTinderもとってもカラフルでポップ、色調は60年代のサイケデリックな広告を彷彿とさせるようなビジュアルが多いです。これは日本でもちょっと前に水原希子ちゃんがCMに出ていたのでお馴染みなのかな。
人種や宗教によって分かれたアプリ
これはNYに来て一番びっくりしたことなのですが、マッチングアプリといっても、例えば「イスラム教徒専用」「ユダヤ教徒専用」と登録している人種やセグメントを区切って謳っているアプリが結構あること。
他にも私が聞いたことがあるのは、アジア人専用やゲイの人専用などがあります。細かくニーズに分かれているのは、いろんな人がいるNYならではだと思います。そしてそういった個人的な嗜好について、公に公開しても誰も何も気にしないのはさすがアメリカ。反面、NYといっても表面下では細かく色々なコミュニティに分かれている様子が垣間見える気がします。意外と多様なようで、似たもの同士が固まりやすい。
多様なニーズに応える
これは2のポイントと似ているのですが、そういった「専用アプリ」でなくても、出会いたい相手について細かくフィルタリングができたり、専用のマッチングアルゴリズムがあるもよう。
そして、LGBTQ+の人たちには、例えば「出会った相手に自分がバイセクシュアルであることをいつ打ち開ければいいか?」「私は女性だけど、私が相手(女性)を気になっていることを伝えるにはどうすればいいか」といった、なかなか人には聞きづらいセンシティブな質問に、実際にLGBTQ+であるセラピストや有名人が回答してくれるオンラインフォーラムもあったりします。
多様な人がいわれるNYでさえ、なかなかオープンにしづらい悩ましい部分があるんだなと思う一方、いろんな嗜好や個性の人がより生きやすくなるための仕組みが存在するのは、NYの「さすがだな」と思うとこだったりします。
あと補足すると、多様という意味では「マッチングアプリ=付き合う人と出会う場所」とは必ずしも一致せず、「カジュアルに遊びたい」から「結婚前提で付き合いたい」の間の様々な希望を持っている人たちがいます。(上のTinderの広告でも「歯ブラシを洗面所に置く関係を求める人に」から「外見が好みだからカジュアルに遊びたい関係」「沈黙が気にならない関係に」などいろんなコピーのバージョンがあります。)なので、自分がどんな関係を求めているのか、相手にはっきり言わないといけない、というのはNYの出会い事情の大きい特徴だと思いました。
広告には、住んでいないとわからないような発見があるので、面白いですよね。自分にはなかなか持てない人の世界が見えてくる感じがします。
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