
世界のどこに行っても大笑いできる綺麗な歯
今日は、歯科検診の日。虫歯チェックと歯石とりをすることになっていた。実は、10月の検診を忘れてた。11月も忙しくていけなかった。先週、おずおずと電話をかけたら、今日がたまたま空いてた。本当は、別の用事が入ってたけど、もちろん歯医者の予約を優先した。だって、私が大事な歯科検診をうっかり忘れてたんだから…。
私の歯はもろい。また、すぐにカリエスになってしまう。小学生のとき、当時の歯医者さんは、私に、「あなたの歯は、お豆腐みたい。少し削ろうと思っても、全部一緒に吹き飛んでしまう」と言われた。永久歯がはえてきても、途端に虫歯になってしまった。毎週、歯医者に通った。
中学生になると、通学途中や朝礼で倒れるようになった。検査すると尿蛋白が異常な数値ででる。当初は腎盂腎炎を疑われ、検査入院したら、「起立性尿蛋白」ということがわかった。タンパク質が尿からどんどん流れてしまう。そもそも、拒食症気味で食事が摂れないのに、わずかなタンパク質も身体に残らない。成長期に身体にタンパク質が欠乏するといろんな問題が出た。まず、背骨に影響が出て、次いで、歯が痛み、奥歯はほとんど神経を抜いた。大体、すべての奥歯を治療した。通ってた歯医者さんは、保険外の金の詰め物を推奨するので、毎月毎月数万円かかった。あるときから、母に言えなくて、1本3万8千円をお年玉から出すようになった。
大学生になると、尿たんぱくはそれほど出なくなり、虫歯はなくなった。ただ、顎関節症になってしまった。そこで、通った大学病院の若い歯科医が、ある日、私に、「あなたの歯は確かに治療して被せている歯もあるけど、透明感がありとても美しい」と言った。驚いた。
2歳のときには、乳歯はほぼ全滅、それから十数年、虫歯治療のため、ほぼ毎週歯医者さんに通った。その際、磨きが悪いと言って、必ず、鏡で、磨き残しを溶液で赤ピンクに染めて見せられる。汚い歯だけじゃなく、やっぱりたんぱく質がないため荒れた汚い肌の顔も映る。思わず、顔をそむけた。
コンプレックスばかりの歯を初めて褒めてもらえた。家に帰り、1本1本歯を見てみた。個性がそれぞれあり、少し横気味にはえている歯、芸術品のように綺麗な金の被せもの、そして透明でオパールのように輝く前歯。愛おしくなった。この日から、私の歯は私の宝物になった。
それからは数カ月に1回、歯科検査にいくようになった。大体1カ月ごと。間が空いても3ヵ月。早40年。奥歯の多くは神経を抜いているので、47歳のときに、左上の1本の根が割れてしまい、抜いてブリッジにした。そして、昨年、59歳11か月、渡仏前に、先生と話し合った。右上も、根が炎症を起こしだした歯がある。「通常だったら、様子見でギリギリまで持たせるのだけど、1年間フランスに行って、その間、歯が痛くなる危険がある。どうしますか」と聞かれた。抜くのは嫌は3割、安心を得たいが7割で、抜いてブリッジにすることにした。
今、私の歯の本数は26本。すべて愛おしい。金の被せ物も30年経つと割れたりする。ここぞとばかりセラミックにかえてもらう。歯医者さんは、「奥歯だから見えないよ」というけど、気持ちの問題。
今日、検診での最終チェックの際、歯医者さんから、「また、20日にフランスに行くんだって。日本より暮らしやすそうだね」と声をかけられた。「はい。でも、歯医者だけは日本が世界一だと思いますよ」と答えると、「そうかな?」と笑った。
フランスで、大口開けて、大笑いできる。私の歯は、60年間、歯医者さんと歯科衛生士さんと私がコラボして作り上げた宝物。
