鰤大根の夜

こんな夜更けに、鰤大根を作った。

ふるさと納税で気まぐれに鰤フィレを頼んだ。土曜日の眠気の中受け取ったこいつは半身で一枚。おとなしく下記URL内にも書いてあるようなさばき方をすればよかったものの、半身の迫力に半ばパニックになった私は、「早くこいつを小さくしなければ!」という使命感のもと勘でさばいてしまった。

結果残されたのは生臭い包丁とまな板、そして雑にころがる切り身もどき。刺身でも食べられたのだろうけど、不格好すぎる見た目をそのままは気乗りしなかった。

そこで鰤大根を作る決心をし、なんだかんだぐだぐだとしていたらこんな時間になったってわけ。

もともと私は鰤大根が得意ではなかった。実家暮らしの頃に食べた鰤大根が影響しているのはおそらく間違いなく、鰤は固くてぱさぱさで、大根には味が染みていない。忙しい中で立派に私を育ててくれた母に文句を言いたくはないけど、あれを食べて育てば嫌いにもなる。

そんなわけで一人暮らしを始めてからもしばらくは作ることがなかった。実家で食べた鰤大根が本来の味と思っていたため、試しに作ってみようという気にもならなかった。自分で初めて作ったのはここ1,2年のこと。

一人暮らしを始めた頃と比べればレシピ動画なんかにアクセスがしやすくなった。他人のレシピを使って料理が趣味とのたまっている私が、たまたまyoutubeで見つけたのが下記の動画(せっかくなので貼っておきます)。

(あ…動画貼るとこんなに場所とるのね…)
レシピを忠実に守って作ってみると、これがまぁ美味しい!!ぶりはほどよくほくほくで、大根にもしっかりと味が通っている。かといって濃すぎる味ではなく、調理工程も手軽でわかりやすい!!

以来何度かこのレシピ通りに作っているけれど、失敗もしにくい(一度だけ失敗しました。馴れのせいです。ぜったい。わたしは料理が得意なんだ)のでとてもおすすめ。

こんな経験が、一人暮らしを始めてから何度かある。
例えばたらこスパゲッティでも同じ思いをした。実家で出されるそれはゆでたスパゲッティにたらこを混ぜただけのもので、味付けは下茹でに使った塩くらい。外食でメニューにあっても、あれを出すの…?お店で?と思ったものだ。

実家で料理を作ってくれるのはほぼほぼ母親だった。もちろんおいしい料理もあったし、なにより料理のバリエーションが豊富だった。いま好き嫌いなくだいたいのものを美味しく食べられるのは間違いなく母親のおかげで、それも含めて感謝してもしきれない。

のだが…たまにあった美味しくない料理は、いまも私の食生活を縛っている気がする。とはいえ料理は味だけじゃない。母親がすごいのは、すべてのメニューがほぼ同時に食卓にそろうことだと今になって思う。

晩御飯できたよと呼ばれ、少しして食卓につくとすべての料理があたたかいままそろっている。一人暮らしをして、自分で料理をするようになった今、このことがどんなにすごく、ありがたいことか実感する。

今や仕事で疲れた日ややる気がない夜は、出来上がったら食べて、食べながら作って…などしている。さっきまで作っていた鰤大根だってそうだ。一緒に食べようと思って炊いた米はもう食べたし、副菜にと作ったほうれん草のおひたしも食べ終わり、残りはタッパに入って冷蔵庫の中。

孤独な鰤大根と、一対一で対峙している。
母親の作る美味しくない鰤大根と、冷めた私の鰤大根。

こんな夜更けに、両親から与えられていた「あたり前」のありがたさを感じながら、鰤大根を食べるのだ。

少しずつ増える小じわに導かれ鰤大根の灰汁を取る指 / touban

ではまた!




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