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飛んで クリスチャニア

デンマークに旅した時は、ボストンのマクロビオティックの学校で仲良しだったデンマーク人のヒッピーカップルのおうちに遊びに行きました。電気も水道も引いてなくて、もしかするとおうち自体が不法占拠みたいな感じだったのかもしれません。 

暗くなってくると、アイリーンちゃんがたくさんの手作りロウソクに火を灯して、ピアちゃんも水汲みや大工仕事でアメリカにいた時よりはオットっぽかったけど二人は結婚という制度に否定的だったので、アイリーンちゃんは妊娠していたのに籍を入れる気は全然ないみたいでした。

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なんで二人のことをちゃん付けで呼ぶかというと、二人がいつもちゃん付けで呼び合っていたからで、それはボストンにいた頃日本人同士がちゃん付けで呼び合うのを耳にして「なんてキュートなんだ!」と思ったそうで、なにが受けるかわからないものですね。

デンマークのコペンハーゲンといえば、アンデルセン童話の人魚姫の像が有名ですが「見に行きたい」と言うとピアちゃんが「俺んちの実家が人魚像目の前やしオカンの家にも遊びに行ったらええわ」(ピアちゃん関西のヤンキーっぽかったのでそれ風に意訳してみました)というのでお尋ねしてみたら、さすが人魚像の前ということでコペンハーゲンの一等地億ションとおぼしきマンションでどう見ても「セレブ」のオカンにお会いすることができました。ピアちゃんはどういう事情なのか、実家が苦手みたいですぐ帰ってしまって我々はオカンの手厚いもてなしを受けたのでした。ミミさんというお名前のレディでしたが開口一番「あなたたちは結婚なさってるの?」「あ、はい」と指輪を見せるとミミさんはちょっとため息をついて「ピアはねアイリーンと結婚しないのよ。わたしはして欲しいんだけどデンマークの若い人たちは今ほとんど結婚しないのよ」と青い瞳を曇らせるのでした。

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そういう「 親の願い」って万国共通なんでしょうか。いや我々もどちらかというと結婚や入籍って紙一枚のことだしと思うタイプでしたが、世界旅行をするとなるとパスポートが同じ苗字で結婚指輪をしているというのがちょっとした身分証明?みたいなものになるので、やっといた方がいいよという長期の海外旅行経験者のアドバイスも受けていたのです。しかし我々が結婚していることが、デンマークでセレブのママさんに、そんなにも羨ましがられるとは… 

コペンハーゲン観光で一番印象に残ったのが、クリスチャニアという地区の見学でした。最近ニュースでそのエリアが健在なのを知って感慨無量でした。ああいう場所が、世紀が変わってもまだ存在するなんて、さすがヨーロッパ懐が深いな…おそらく普通にツアーでコペンハーゲンに行くと、クリスチャニアには行かないと思いますけど…と思って念のため検索してみてびっくり。今では人気の観光スポットとなっているのですとぉ?!現在の写真を見ると、落書きだらけの建物や、まるで学園祭で急ごしらえするほったて小屋みたいな感じのカフェやお店は、なんとなくおしゃれにブラッシュアップされているとはいえ基本当時のまま…ほんと年月は街のありようも変えるんだなあ、昔は現地の友人がいっしょじゃないと近寄ってはいけない場所のようなイメージでしたが。 

そこは、今でもそうらしいですけど、マリファナやハッシッシを吸ってもオッケーな地区でした。カフェではみんな板チョコを食べていて(とわたしは思ったんですよ)ぼうっとくつろいでいて、ものすごく静かでした。

「じゃ次いこか」と促されたのだけれど、わたしはどうもみんなが食べてるチョコの色が妙なのが気になっていて「ねえあのチョコって何味?」って聞きましたアイリーンちゃんはわたしをじいっと見つめてハグしてきて「ましろ!あなたって、なんてスウィートなの?」と笑いました。全然知らなかったけれどそれは固形に練ったハッシッシでみんなは食べてるんじゃなくて炙って吸引していたのでした。どうりで全員ぼうっと脱力してたわけだ…

おうちに帰ってからも「ハッシッシのことチョコだって」とピアちゃんと二人で涙を流さんばかりに笑っていました。まさかのバカ受け?

その後二人の間には、二人にそっくりなかわいらしい娘が無事生まれ、写真を送ってきてくれましたが、さらにその後ピアちゃんが若いオンナに走って二人は別れたようでした。やっぱりな…ってちっとも意外じゃなかったけれど悲しかった。

ミミさんも悲しかったんだろうな、ミミさんはアイリーンちゃんの産んだ孫娘に会えなくなったんだろうか、と地球の裏側の人さまんちのあれこれでブルーな気持ちになりました。

地球上どんな場所でも、なんだか似たようなことが日々起こっていて、そして地球は、なにがあってもどんまいみたいな感じでくるくる回って昼と夜が繰り返しているのでしょうね。

いまでもアンデルセンの人魚姫の絵本やアニメを見ると、ミミさんのあたたかくてちょっとさびしげな笑顔が浮かんできます。



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