健康診断の胸部レントゲン検査を妊婦が受けたくない場合にどうするのか?
まず、調べてみて分かったのは、この問いには、明確な答えがない。簡単にいうと、受けたからと言って損もしないし得もしないので、立場によって、答えが変わる。なので、簡単に調べられるかなと思ったら、結構時間を取られてしまった。という反省。
科学的には、
妊婦に胸部レントゲンを撮ること自体、被曝する線量が少ないのでほぼ無害。
法律的には、
労働安全衛生法に基づけば、妊婦でも労働者であれば、本人に受ける義務があり、会社に受けさせる義務がある。
医療倫理上の問題
本人が同意しない検査を行ってもよいのか?(就業上、合理的な必要性が高ければ受けなければならない義務も発生しそうだが)
安全管理上の問題
胸部レントゲン自体は害じゃないにしても放射線管理区域内に入ることが意図しない被ばくを引き起こす可能性。(本人がそう思っているかどうかはともかく、現実的には心配すべきはこっちな気はする。)
業務としては
電離放射線予防規則に基づけば、絶対ダメではない。(安全防護策を講じたり、基準線量を周知徹底していれば)
本人および会社の利益の問題
妊婦検診で健康管理をされている人間に、胸部レントゲンをする意味は、一般労働者に比べれば低い。
母親の精神的な問題
妊婦は過剰に子供のことを心配をするものなので、そこを加味すると、精神的な負担や、後々トラブルになったりすることを考えると、実施することのデメリットも大きい。
結果的に、この問いに関する答えを厚労省が明確に答えている記述を見つけることはできず。
現実的な運用としては、妊婦が受けたくないと言えば、健診機関が、現場の医師の判断という体裁で、胸部レントゲンを除外するというのが、一般的な運用のようです。
参考:入国前の結核検診
日本に入国する人間の入国前の結核検診(一般妊婦より結核の有病率が高いと想定される)の手引きにおいて、「妊娠初期における胸部レントゲン撮影は推奨しない。」との記載がある。
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妊娠中、特に妊娠初期における胸部レントゲン撮影の胎児への影響は小さいものの、一定のリスクが伴う。従って、妊娠初期における胸部レントゲン撮影は推奨しない。以下の2つの代替の選択肢がある。
(1)出産後まで健診(及び在留資格認定証明書交付申請/査証申請自体)を延期する。
(2)プロテクターを装着しての胸部レントゲン撮影を行う。
いずれの場合にも、十分な説明・カウンセリングを実施したうえで同意を取得し、適切な形で記録に残す。
会社としては
法律を守るために、
「科学的には、胎児にほとんど影響はないので、受けてほしい。」
と答えるざるを得ない。
→より丁寧に対応するなら、産業医が話を聞いて、受けなくていいかどうか判断する。
健診機関としては
科学的に問題がなくても、妊婦を安心させる方が大変なので、現場の医師が判断したということで、受けさせない運用になるようだ。
ということで、立場によって見解が異なるということだと思われる。