受け継がれる祈り
私は約6年間、滋賀県に住んでいた。
何故か長浜市の高月町が好きで、壁にぶつかるようなことがあると度々この町を訪れた。町の中に農業用水になるものと思われる水路が走っており、いつ行っても綺麗な水が流れている。
滋賀県の人々は、ずっと昔から水と共に生き、自然の中に神を見出だしているように思う。
高月町の渡岸寺に安置されている十一面観音像は、天平時代(詳細は不明)に疫病が蔓延した際、終息を祈念して一本の木から彫られ、その憂いを絶ったそうだ。また、姉川の合戦の際は、村人たちが己の命も顧みず観音像を土中に埋めて守ったという。水の化身であるかのような十一面観音像は、拝観すると心が洗われ、私たちと苦楽を共に歩んで下さるかのように優しく美しい。
国の寧静の祈りは、現在も高月町の人々と共に受け継がれている。
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