【第4回】北斎づくしバックストーリー【展示企画/PR編】
こんにちは、北斎づくし運営です!
北斎づくしの裏話をにてお伝えする「北斎づくしバックストーリー」第4回です!
第4回は特別展「北斎づくし」をより多くの方に届けるために奔走したPRや展示企画を紐解く【展示企画/PR編】をお届けします!
インタビューは凸版印刷株式会社 文化事業推進本部の安西 慧さんです。
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①ご担当を教えてください。
この企画の最初期から関わり、展覧会全体の進行とPRを担当しました。具体的には借用する作品の所蔵者さま方との窓口、会場選定、展示作品の輸送、クリエイターの皆さまとの調整や原稿依頼、展覧会PRの取りまとめ、掲載原稿チェックなど、実務を多岐にわたり担当させていただきました。
△展示完了直前の『北斎漫画』。
②特別展「北斎づくし」へのこだわりや見どころを教えてください。
もともとこの展覧会は、第3回にも書かれていますが、弊社が浦上さんのコレクションのデジタル化とその活用をご一緒する中でアイデアが生まれました。そして、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで海外から多くの方が訪れるタイミングに北斎の魅力をお届けしようとなり、そこから私も参加させていただくことになりました。
実現に向けて大きく動き出したきっかけが、Casa BRUTUS 9月号に掲載された橋本麻里さんの記事にもございましたが、アートディレクターの故・高岡一弥先生にビジョンを描いていただいた「北斎漫画を全ページ、本の状態で並べる」という前代未聞のコンセプトでした。浦上さんに田根さんをお引き合わせするためのその打ち合わせの場に、幸運にも私も居合わせておりましたが、本当に実現できるとはその時は夢にも思いませんでした。
③大変だったことはありますか。
このような企画までの経緯から、いわゆる王道の美術展覧会とは異なる文脈で企画を進めていく覚悟を決め、冨嶽三十六景、富嶽百景を加えた3つの代表作品を「通期」で「すべて」ご覧いただくことが本展の核に決まりました。そして田根さんに続き、橋本さん・祖父江さんの参画も順次決まり、豪華なクリエイティブチームが結成されました!
ですが、そこからのプロモーション計画はかなり苦難の道でした。
△浦上蒼穹堂での打ち合わせの様子。
1つ目の課題は会場。今回、これまで美術展を開催したことがない東京ミッドタウン・ホールが会場ということで、美術展であることがちゃんと伝わるのかという不安、そして固定のお客様がいない、館の固定媒体もないという環境。常設ミュージアムがふたつあり、私も大好きな街なのですが、そもそもこの展覧会の存在を認知してもらうことへのハードルがありました。
2つ目は展示作品の少なさ。それぞれ全ページのため、展示物の数は600点以上と膨大なのですが、PRを始めたタイミングでの作品数は3作品のみでした(読本挿絵が加わることになり最終的には7作品となりましたが、それでも非常に少ない)。展示会場が出来上がれば写真でその凄さが伝わる自信はあったのですが、事前プロモーションとしてどのようにこの凄さを伝えれば響くのだろうか、美術展の経験が豊富なPR会社さんとも悩みの種でした。
△初期の会場イメージ。
3つ目はやはりコロナ。当初の2020年開催から丸一年の延期をおこないましたが、美術館のチラシ設置中止や、度重なる緊急事態宣言や外出自粛要請で交通広告も効果が激減。ただでさえハードルがある中で、さらに大きな逆風を感じました。
今回のPRではイメージしづらい魅力の部分を、田根さんによる北斎漫画の部屋やデジタル展示のイメージ図から展開をしていきました。そうしたアプローチから、当初は美術専門誌に取り上げていただくのがむずかしい状態などが続きましたが、橋本さんによるコンセプト・「北斎づくし」というタイトル立案、祖父江さんによるキービジュアル制作など、展覧会が組み上がっていくにつれて、おのずとPRポイントも明確になっていきました。コアメンバーでの議論を通じ、アップデートされた田根さんによる空間イメージが出てきた瞬間、「これしかない!」と強く感じたことを覚えています。
そして、そこからは共催のメディア各社さまとの音声ガイドを見据えた町田啓太さんへのアンバサダー打診、東京ミッドタウンさんによる北斎グルメや北斎トランプなどのコラボイベント展開など、関係者で一致団結して盛り上げていくことができました。
△東京ミッドタウンさんとの期間限定コラボメニューや北斎トランプ。
△ミッドタウンの商業施設内にも北斎ワールドが展開!
かなり直前まで展示プランのアップデートを行い続けていたことで、入稿を伸ばしていただくなど、慌ただしく制作に関わらせていただいたAERA MOOKの『北斎づくし 完全ガイドブック』も思い入れが強い媒体となりました。
他にもニコニコ美術館やTikTokライブなど、書ききれないことがたくさんありますが、本当に多くの方に応援・支えていただいたおかげで、緊急事態宣言下の中にも関わらず多くの方にお越しいただくことができました。苦しい世の中だからこそ、皆さんにこの展示で笑顔になってもらえたことが本当に嬉しかったです。
<ニコニコ美術館>※アーカイブ公開期限未定
ニコニコ美術館では、展覧会初日の閉館後にこの展覧会の模様を世界的北斎コレクターの浦上満さん、アートディレクター・ブックデザイナーの祖父江慎さん、ライター・エディターで永青文庫副館長の橋本麻里さんの解説とともに、生中継でお届けいたしました。
<TikTok>
④イチオシの北斎作品は?
PRをしていてると、取材立会いを通して、それぞれの作品について魅力的なお話を数多く聞く機会があり、色々な作品に愛着が出てしまってすごく悩みますが、2019年に撮影のために山口県立萩美術館・浦上記念館へお伺した思い出も合わせ、「冨嶽三十六景 甲州三坂水面」がイチオシです。庶民の暮らしとセットで富士が描かれること多いのが三十六景の魅力ですが、湖面に浮かぶ小舟とお化粧をした逆さ富士の静かな雰囲気にとても引き込まれました。
撮影の際には、ガラスなしで作品を見せていただくことができたことも貴重な経験でした!
△「冨嶽三十六景 甲州三坂水面」山口県立萩美術館・浦上記念館蔵
⑤特別展「北斎づくし」特設バーチャル会場にご来場される方に向けて
当初の想いであった海外の方にはお越しいただくのが困難な中での開催でしたが、バーチャル展覧会を通じてそういった方に届ける環境がつくれたことも、協力いただいたみなさまに感謝の気持ちでいっぱいです。
会場空間から展示什器の中も外も、展示解説文、キャプションの文字組み、作品の並び、など本当に隅々まで強い想いの詰まった展示ですので、ぜひじっくりとご覧いただければ幸いです!
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インタビュー:安西 慧(凸版印刷株式会社 文化事業推進本部)
編集:三澤(北斎づくしSNS担当)
\特別展「北斎づくし」特設バーチャル会場を期間限定・無料公開! /
公開期間▶︎2021/9/23(木)-10/10(日)
公開場所▶︎展覧会公式サイト https://hokusai2021.jp/special/
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