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「今宵の友に弔いの焔を。」
どうも、トゥインクル・コーポレーション所属のお笑いデュオ、黒子(ほくろ)タクシーの桃寧(モネ)で御座います。そうなんですよ。コンビじゃなくってデュオなんですよ、うちら。(※1・この人の言うことは話半分で聞きましょう!)
3秒前にも述べたとおり(読む人の速度によるよね!)、私は普段お笑い芸人をやっておりまして。それはそれはもう「オモロいとはなんや?」と24時間自問自答しているような人間なんですが(※1)、つい先日までお笑い以外のお仕事に携わらせて戴いておりまして。それがなんと「笑い」とはある種真逆の「恐怖」。ホラー演劇の脚本づくりと出演。「出しゃばり過ぎじゃない?!」って思った貴方、多分正しいよ。ゴメンて。
依頼して下さったのは「春雷レイメイ」という団体さん。代表の方が我々の単独ライブをご覧になったことがあるそうで「是非桃寧さん(多分依頼された当時はモネだけど)にイマーシブホラー公演の脚本を書いて欲しい!」と。本格的な演劇の台本なんか書いたことないし、ホラー作品にもあまり明るくないし、あとイマーシブって食べられるの?と不安要素はそこそこあったのですが、なんだろうな、タイミング的に「いっちょやってみっか!」と僕の心の中の超武闘伝孫悟空がGOサインを出したので「是非やらせて戴きます。」と引き受けました。
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演劇の台本づくり、そしてイマーシブ(没入型)という若干特殊な環境。今まで自分が書いてきた台本(数分程度のネタじゃなくって、90分くらいの単独ライブの方ね)が如何に「自分本位」だったかを思い知らされたというか。「わぁ~こんなにも考えなきゃならない、配慮しなきゃならないことがあるんやぁ~!」と圧倒されまくりでした。脚本のお仕事されている方って本当にすごい。
で、今回の記事はそんな「ブギウギッ!桃寧の脚本初挑戦!しっちゃかめっちゃか反省会!」的なやつではなくって。書かせて戴いたホラー公演台本のタイトルや登場人物名の由来などをつらつらと綴らせて戴きます。ネタバレどかどか含みます。(※ちゃんと春雷レイメイさんの許可は取りましたよ!)
ここまで読んでお気づきの方も居ると思うのですが、桃寧の書く文章は冗長傾向にあります。予め覚悟を決めてからお読み下さいね。
まずタイトルの『弔焔』。読み方は「トムラホムラ」。
(※「ん~?どうやってってかどの段階でこれに決めたんやっけ?」と38歳記憶力爆下がり老化おじさんの私、主宰の方とのLINEやり取りを読み返してまいりました。なるほどなるほどそういう経緯か。)
主宰の方との話し合いでメインキャストが小川直彦さん、小野大地さん、桃寧の三人に決まり(じ、自分から「出して出してー!」って言ったんじゃないんだからねッ!!!主宰の人に「出て欲しい!」って頼まれたんだからねッ!!!)、本番の会場が四ッ谷のシアターウイングに決まり、レイメイの方と下見に行き。会場を見て「夜行バスに乗った人たちが事件(or事故)に巻き込まれて異世界に辿り着き、最終的にメインキャスト3人の中から誰か一人を犠牲に選ばなくてはならなくなる。」という大筋が浮かび、OKも貰えたのでその方向で書き始めて。
で最初にメインビジュアルを撮影する日までにタイトルを決めて欲しいということで「ん~、何にしようかしら?まぁ犠牲になった人は火刑だよな、何となく。うんやっぱ火葬だよ。炎がすべてを包み込むんだよ。炎(ほのお)…いや、焔(ほむら)やな。志々雄真実(桃寧が大好きな漫画「るろうに剣心」の超COOLな敵役)の壱の秘剣も"焔霊(ほむらだま)"やもんな。ホムラ…ん~。弔いの焔。あ、トムラホムラって良くない?『弔焔』って書いてトムラホムラ!語呂いいし!ドグラ・マグラみたいな響きだし!まだ読んだことないけど!うん!『弔焔』!『弔焔』やーーーーッ!!!」という感じで(僕の中で)決定。主宰の方にLINEを送り「ホラーにしては響きが可愛らし過ぎますかね?」と訊いてみたところすんなりとOKを戴き正式決定。(由来ってこんな書き方するもんだっけ???)
なのでまぁ一応『弔焔』由来としては、まんまなんですが「犠牲者を弔う炎」という意味です。炎の表記が「焔」な理由は上記のとおり。ちなみに志々雄の技の正式表記は「焔」じゃなくって「焰」みたいですが。
で、次に主宰の方から「フライヤーに載せるあらすじの文章が欲しい」という依頼を受けまして、そこで送った文章が
暗闇の中を走る一台の夜行バス
夜の深い静寂に包まれて
乗客の誰もが一瞬
自分の目的地を忘れた
そんな乗客たちを嘲笑うように
無機質な走行音の伴奏の上で
不気味な声がひとつふたつみっつ
重なっていく
辿り着いたのは誰も望まぬ目的地
現世と黄泉のセカイの狭間
すべての咎は暴かれて
審判の時が訪れる
さあ選択の時間です
「今宵の友に弔いの焔を。」
貴方のセイギの下に
正しいギセイを選べ
ってやつでね。そう、ここであの決めフレーズ「今宵の友に弔いの焔を。」が爆誕したのです。
で、それよりも前だったかしらね。時系列的には。メインビジュアルを撮影するにあたって「メインキャスト3人のイメージとかモチーフになるアイテムとかを教えて欲しい」という連絡がありまして。そこで頭に浮かんだのが「燃えて無くなるもの」というイメージ。最終的に火刑で燃えるという物理的な意味合いもあるし、押し込めていた感情を爆発させて熱くなり燃えてしまうという心理描写的な意味合いも。まぁ大抵のものは燃えてなくなるんだけどね。なんだろうこう「『燃えて無くなる』っていう状態の映像が象徴的・印象的なモノ」という感じ。(※桃寧は典型的な右脳・感覚派人間なので雰囲気とかニュアンスみたいな曖昧表現を多発します!)
でそこから「紙」「氷」「綿」の3つのアイテムを提案。
小川さんはその時まだ直接お話したことは無かったのだけれど、脚本を書くにあたって春雷レイメイさんの第1回公演『死の淵へ誘う悪魔』を見学(体験?)させて戴いてて。その時の印象が「めちゃくちゃカッコ良くて演技の上手い役者さん」というもので。とにかく小川さんには「演劇」「お芝居」のイメージが強くあったので「本」「台本」からの派生で「紙」。
小野さんはそれまでに何度かお話したことあって、実際はめちゃくちゃ人間味のある方なんだけど、やっぱビジュアルが「この世ならざる者」感があるというか、初めてお逢いした時にパッと頭に浮かんだフレーズが「熱をもたない闇人形」っていう、HUNTER×HUNTERでイルミがキルアを表して言った台詞で。(失礼だったらゴメンね!小野さん!貴方はとても温かい心の持ち主です!) それで「氷」。
で、まぁね桃寧はね「ぬいぐるみぃ~ぬいぐるみぃ~フヘヘへ… オイラも死んだら内臓全部引きずり出して、代わりに綿いっぱい詰めてぬいぐるみにしておくれよぉ~ゲヘヘヘ!」とか言ってるヤバいやつなんで「綿」。
で、そのモチーフから各々の役名が
冊騎(サツキ)、凍夜(トウヤ)、綿留(ワタル)に決定。
3人の役名を決める際、主宰の方に「『死の淵へ誘う悪魔』の『堕依(ダイ)』と『世落(セラ)』みたいな感じの方がいいですかね?」と訊いてみたところ「全然そんなの気にせず桃寧さんが好きなようにつけて戴いて大丈夫です!」と返事を戴いたんですが、やはり春雷レイメイを愛するお客様はあの独特の世界観を愛しているのだろうし、素敵世界観御衣装でのメインビジュアル撮影も終わっていたし、それなのに例えば
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詩影薬 秘当朗(シェイクス ピアタロウ)!!!
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嗤ゥ氷人形(ワラウアイスドール) 狂(キョウ)ちゃん!!!
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問晒(トイザらス)!!!
なんて名前つけちゃったら台無しじゃないですか。うん、でも「問晒(トイザらス)」は結構好きかも。
なので堕依や世落の世界観もありつつ、音だけだとよくある名前に聴こえる「冊騎(サツキ)」「凍夜(トウヤ)」「綿留(ワタル)」にしました。(賢明な判断!)
「冊騎」の漢字は「紙」というモチーフからの「冊」と殺陣の身のこなしが美しい小川さんにぴったりの「騎」をチョイス。「凍夜」の漢字は「氷」というモチーフから「凍」と同じく冷たいイメージのある「夜」をチョイス(真夏の夜は暑いんだけどさ!)。「綿留」の漢字は「綿」というモチーフからそのまま「綿」とぬいぐるみはその綿を布で包んでとどめているから「留」をチョイス。てかチョイスよりも選択って表現をすべきだろ、絶対。
メインキャスト3人の名前(偽名の方だけど)の由来はそんな感じ。
ここからはテンポ良くいきましょうね。
咎人裁判の舞台となる異世界・異空間『糸ノ邑(イトノムラ)』。「"命"や"蘇り"を想起させる無数の糸(紐)が垂れ下がっている空間」という舞台装飾設定は名前を付ける前に決まってました。そして当初、冒頭の夜行バス内の暗闇シーンでメインキャスト3人はずっと謎の言語(実は本編に出てくる各々の台詞のアナグラム)を喋っていて、その最後に「今宵の友に弔いの焔を(コヨイノトモニトムライノホムラヲ)」のアナグラムである言葉を3人同時に言ってOP映像が始まるという予定で。その時に作ったアナグラム台詞が「祠を忌む夜の喪にと糸ノ邑(ホコラヲイムヨノモニトイトノムラ)」で、上手いこと「糸ノ邑」という単語が生まれたのでそのまま採用。結局そのアナグラム台詞は使わなかったけども。
「糸ノ邑の主」と名乗る天の声的存在『葬喇(ホムラ)』。最初はもっと淡々とした口調で「異世界の主」みたいな感じで具体的な名前をつけて居なかったんだけど、途中から「ホラーっぽい世界観に不釣り合いなくらい不気味な明るさを持ったキャラクターしよう!」とになり「ホムラ」と命名。最初はカタカナ表記のつもりだったけど声優の竹内麻沙美さんに演じて戴き、その高らかで無邪気な声を聴いた時に「葬」にラッパ(喇叭)の「喇」と書く表記を思いつきそのまま採用。冊騎の偽咎のヒントのフライヤー(「葬魔が来りて喇叭吹く」)などにも派生。
出てくる人間たちの名前。気づいている人も多いと思いますが、全員名前(or苗字)に「糸」の入っている漢字を使ってました。
『浅月 綴(あサツキ つづる)』。冊騎の本名(フェイク)。苗字の浅月は「サツキ」という音が入っている苗字を探して何となく気に入ったから採用。下の名前の「綴」は糸偏の漢字で作家っぽい意味を持っているから。
『円札 経(えんサツ キょう)』。冊騎の本当の名前。苗字と名前を跨いで「サツキ」の音が入るように付けた。「サツ」で終わる苗字なら他のでもよかったんだけど「円札」という苗字が何となく彼のキャラクターに合っている気がしたので採用。「経」も糸偏の漢字で「おさめる」などの意味があるので。
『松任谷 縣(まつトウヤ けん)』。凍夜の本名(フェイク)。苗字は「トウヤ」という音が入っているから。「縣」は糸が入っているのと「ケン」という音の響きと「ぶら下げる」という意味が生死を彷徨っている状況に合う気がして採用。
『松任谷 潔(まつトウヤ きよし)』。凍夜の本当の名前。苗字は上に同じ。「潔」は糸が入っているのと「けがれがない」「いさぎよい」という意味が潔の行いと正反対過ぎるという矛盾が、なんだか彼の哀しさ・苦しみを象徴している気がしたので。
『鶸田累(ひワタ ルい)』。綿留の本当の名前。苗字と名前を跨いで「ワタル」の音が入るように付けた。「鶸」はスズメの仲間の鳥らしいです。「累」は「わずらわせる」「まきぞえをくわす」みたいな意味があるそうでぴったりだなぁと。
あとの登場人物名は基本的に「糸」が入ってることだけ条件にして字面とか音の雰囲気で決めましたね。
『深水 結姫(ふかみ ゆうき)』。浅月に盗作された劇団「fil de egavalcse(フィル デ エガヴァルクス)」の脚本家。深水という苗字はヒントアイテムの遺書を作る際に春雷レイメイの主宰さんが「『浅月』の逆」みたいな感じでつけてくれてたのでそれをそのまま採用。名前も最初は祐次とかだったと記憶してるんですが「糸」が入った漢字にしたいのと女性の名前にして欲しかったので「結姫」に変更。ちなみに「fil de egavalcse」、「egavalcse」は造語でフランス語で「奴隷」を表す「esclavage」を逆さにした言葉。「自由」とか「解放」みたいな意味。「fil de」は「~の糸」という意味のフランス語で総じて「自由の糸」みたいな意味。浅月が円札に洗脳されていた劇団「毬緒網(マリオアミ)」の対極を表現してました。「毬緒網」の由来はお察しの通り「マリオネット」です。
↓「なんのこっちゃ?」という方の為に冊騎の偽咎ヒントアイテムのフライヤー2種(どちらも桃寧作成)の画像を添付しときますね。
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フライヤー内の劇団「毬緒網」の面々の名前(円札、浅月以外)、客演の方の名前は完全に僕の遊び心なのであまり深い意味はないです。言葉遊び好きなので。
『綿来 絹(わたらい きぬ)』。これは綿留の愛する女性の名前ですね。まぁ「愛する」という言葉に納得のいかない方も居るかと思いますが。ワタワタからの「綿来」。「絹」は糸偏の漢字なのと音の響きが好きだから。「きぬちゃん」っていいじゃん。ねぇ。
あとヒントアイテムに出てた名前だと『松任谷 綏(まつとうや すい)』も居ましたね。凍夜のカバンに入っていた日記に名前がありました。日記には多分カタカナで「スイ」って書いてたと思うけれど。冊騎のカバンに入っていた新聞記事には漢字表記がされていたはず。「綏」は「垂れたひも」みたいな意味があるそうです。
あと多くのお客様が「仮面のお姉さん」と呼んでいた従者さん。彼女にも名前がありまして『緯沓(いと)』といいます。由来は御想像にお任せします。
こんなところですかね、人名。あとは地名とか。夜行バスが走っていた東京都の『糺命村(あざなめむら)』(ニュース音声で流れていた)、これはもちろん架空の地名です。「糺」には「糸をより集める」という意味や「誤りをただす」「取り調べる」という意味があるそうです。なので「命をの誤りを正す・取り調べる」という意味でつけました。あとは松任谷商社の精肉加工工場がある『氷絡市(ひょうらくし)』も僕の付けた架空地名です。凍夜なので「氷」で「絡」は糸偏だからというシンプルな由来。ちなみに縣の社員証にあった『両子』という地名は主宰の方が「双子」というところからつけて下さった架空地名だと思われます。
うーむ!一体何人がここまで読んでくれているのだろう?文章短くまとめるの苦手ですみませんね!全部読んで下さった皆様ありがとう御座います!一応しっかり網羅したつもりですが「この名前の由来は?」ってのがありましたらコメント欄とかに書いておいて下さいな。僕が付けた名前ならば由来お答えしますので。
とにかく凄く貴重な経験になりました。主宰の方から「なるべくお客様に罪悪感を抱かせないように」という御要望があったので、なるべく気兼ねなく選択出来るようにと冊騎も凍夜も綿留もかなり身勝手な咎にしたつもりでしたが、なんだかんだどのキャラにも愛着が沸いちゃって、そういう咎を背負うに至る経緯とか考えちゃって罪悪感0%で選べる感じじゃなくなっちゃったよな。まぁ罪悪感0%で選択出来た方もいらっしゃるとは思いますが。
考えてたけど結局劇中で使わなかった台詞。
「殺せよ!そんな罪悪感!どうせ明日には忘れちまうんだから!!!」
ね。殺せねぇよなぁ。ちなみに円札氏の
「この世界で一番不必要なのは"罪悪感"だ。」
(※劇中の台詞では「芸能の世界で」だったけどね。)
って台詞は何だか一部の方には好評だったようです。時には罪悪感を捨てることも大事。なのかな?どうなのかな?自分で書いてて解らなくなってくるよ。難しいね。咎咎咎咎…
最後はこの言葉で締めておきましょう。
『今宵の友に弔いの焔を―。』
【追記】
私としたことが、我が愛すべき咎熊ちゃんこと「すす太郎」ちゃんの名の由来を記載し忘れておりました。
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この写真のめっ可愛の仔ね。すす太郎。その由来は…
フィーリングです!!!
うん。もう本編にどう絡んでるとか、伏線とかそういうの全くないです!この仔の顔視た時に「すす太郎」って浮かんだからもう「すす太郎」なんすよ、誰がなんと言おうと!すすちゃんも気に入ってるって言ってくれたし!可愛いぢゃん!すす太郎!すし太郎とも一文字違いでなんだかおめでたいし!ちらし寿司ってすっごいおめでたいイメージあるじゃん!ね!
というワケで大事な大事なすす太郎ちゃんの由来を書き忘れていた最低最悪咎人の私、問晒こと桃寧は葬喇ちゃんの高らかなる掛け声と共に火刑に処されます!さらば全ての愛しき咎人共よ!!!