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寝る間を惜しんで見てる夢

まって、無理

って、言葉が最初に出た。絶句しなかった。嬉しいことも、辛いこと、どんな情報に出会っても「待って、無理」が最初に出てくる。オタクはそう言うふうにできている。

『推し燃ゆ』を読んで、自分以外のなにかを、たとえはアイドルを背骨にすることが、どんなに自分を脆くするのか知っていたはずだった。

それでも好きで、大好きで、だけど近づくことは許されない。その先を願うことすらできない私たちは、強く思い、時には勘違いしながら背骨とすることで、その思いと、実際の関係性のスキマを穴埋めしていた。


実際、アイドルとファンの関係性はなんと表現するのが正しいのかわからない。会社幹部と株主のようでなければ、ただの供給者と消費者のようでもない。ただそう願っているだけなのかもしれない。
ただ、嬉しい、楽しい、そしてご尊顔を提供してくれるだけの存在にしては、知りすぎている。

知りすぎていると勘違いしている。

テレビ、雑誌、ラジオで好きな食べものから恋愛観まで、さまざまな情報を与えられ、また一層夢中になり、情報を探しては虚妄が生まれる。そして、自分だけのアイドルが出来上がっていくのだ。

そうして、私たちは彼らのことを何にも知らない状況が出来上がる。

与えられたものはごく一部で、その一部を縫い合わせては補完し、自分の思い通りに作り上げて共有する。自分と同じ虚像を持つ人がいると安心して信じ込んでしまう。その、作り上げたものに当てはまらない出来事が起こった時に、どんなに声を上げても、なじっても、彼らには影響しない。届いても、彼らの人生だし、そもそも、私たちが作り上げた象と現実は違うからだ。


今回のことで、彼らのことを無責任だと言ってはいけない。私たちはただ、彼らには何にも影響を与えることができず、そして、背骨としていた私たちが悪いから。
でも、彼らの人生が今後うまく行くことを願わなくてもいい。だって、背骨を担っていたのに、それだけのものを背負っていたのに。それも私たちのエゴだけれど。

それぐらいは、思ってもいいんじゃないかな。


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