記事一覧
自動筆記/2023.10.28(5分間)
どこまで行っても白い海だった。夕方過ぎに苦しんでいた魚たちの群れが星の輝きを伴ってこの世界に降りてきた。レンガ造りの家で小さなピザを焼いていたその人は、この世界の終わりみたいな顔をして僕に静かに手招きをした。夫婦たちが踊り狂っている。
クリアファイルには何も書かれていなかった。地図の中にその島は浮かんでいなくて、宝物はどこにもないみたいだった。切手を貼って出した手紙が届くころ、世間は大きなニュー
自動筆記/2023.10.19(5分間)
六月の雨が降る夜のことだった。ひとつだけそこにあったたんぽぽがやせ細って空を見上げていた。何もないような気がしていたのにそこには小さなトンネルがあって、そこを通ってくる人たちはみんななごやかに穏やかに笑っていた。少し不思議な人たちだと思った。だからといって彼らをさげすむことはなく、僕たちはそのまろやかな瞳に見とれていた。苦しみには魂が宿る。言葉がなにも生まれないまま、夕方過ぎに止んだ雨がはじめて僕
もっとみる自動筆記/2023.06.30(5分間)
さてこれはもうびっくりしたことになにもできないのだ、僕は東京タワーに上ってそれきりだった。床に散らばったたくさんのおがくずを拾い集めて果たして何になるのだろうか、イルカが血まみれになっていた、そこだけに光があった。何も考えられないことに対して人はなにも怒らなかった、僕だけが怒っていた、許せないことにトマトをひとかけら食べた後、星屑のように舞い散る雪が僕らの頭上に降り注いでいた。世界が祝福していた。
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