自動筆記/2023.10.19(5分間)
六月の雨が降る夜のことだった。ひとつだけそこにあったたんぽぽがやせ細って空を見上げていた。何もないような気がしていたのにそこには小さなトンネルがあって、そこを通ってくる人たちはみんななごやかに穏やかに笑っていた。少し不思議な人たちだと思った。だからといって彼らをさげすむことはなく、僕たちはそのまろやかな瞳に見とれていた。苦しみには魂が宿る。言葉がなにも生まれないまま、夕方過ぎに止んだ雨がはじめて僕たちの前に姿を現した。虹よりも先に橋が壊れていった。そこにいた人は振り向きもせず