見出し画像

『白虎の路』 甲州街道とうりゃんせ 2

その2 「回想」



回想

1.二十五歳の秋

 あの頃、直人達は若さを持て余し,毎夜、渋谷、恵比寿、六本木と遊び回っていた。

 直人と秋彦(山西秋彦)は、湘南にあるK高校からの同級であった。
湘南とは、相模湾一帯の地域の総称であり、鎌倉時代あたりに禅宗の流布に伴って中国の湘南に因んでこう呼ばれるようになったらしく、現在でも古都のような風情が感じられる。
直人は、この湘南をこよなく愛していたのだが、都内のK大進学とともに実家のある藤沢を出て世田谷へと移り住み、卒業後もそのまま駒沢公園近くの新町に暮らしていた。
秋彦も、同K大に進んだが、在学中は実家から通っていた。そして、大学卒業と同時に、実家の横浜を出て渋谷近くの池尻大橋にワンルームを借りた。

 当時、直人はフリーター、秋彦は画材屋の外商で働いていたが、池尻大橋で夜毎、合流しては、秋彦の部屋を起点に夜の街へと繰り出すことが日課となっていた。

2.陣取りゲーム

 傍若無人に遊び回っていたある日、秋彦からの着信。

「もしもぉーし、直人ぉ、今なにしてっか分かるぅ〜?」

「ン・・ なに、秋彦? ンなの知るかよ!」

「利紗世と裸で陣取りゲーム!」

「なに、女としてんのか? 終わってから、かけ直せよな。 ばぁーか」

「あ、待て,切るな! やり終わって戯れてるだけだから・・・なっ」

「あんだよぅ・・うっぜえな、ぜんぶ終わってからにしろや!」

 プチっ・・・。

3.秋彦の誘い

 数分後、再び秋彦からの着信。

「わりぃ、わりぃ、実はさぁ、利紗世が、今度の土曜、あと三人揃えるから、4対4で遊ばねぇって言ってんだけどさ、直人、お前、行くよな」

「ああ、分かった。 つか、リサヨって誰よ?」

「おぅ、利紗世な。 大学ン時に、つるんで遊んでた勝也って奴と昔付き合っててさ・・ 当時,中三で可愛かったんだ」

「ふぅーん、そういや、秋彦、お前けっこう、ロリ好きだったしな」

「・・・」

「勝也って、千葉の大会なんかで優勝とかしてた奴?」

「そうそう、その勝也。 んで、勝浦 サーフィン行った時なんか、波に巻かれて、疲れて上がって来たら、アストロ なんか、ゆっさゆっさ、揺れてんじゃん」

「アストロって、シボレーアストロ?」

「そうそう、直人が乗ってるアストロの色違いで、銀メタのやつ」

「お前、大学ん時、そんなの乗ってたっけ?」

「俺んじゃないさ。。。 勝也の奴、車も女も良いの持ってたじゃん。 で、羨ましくってさ(笑)」

「よく言うぜ。 そういう、お前だってワーゲンバス、フルレストアして乗ってたじゃんよぉ!」

「あいつさ、女にしたって何処のチームだったか覚えてねえけどさぁ、フォーミュラやGTのレースクイーンとか、nyanNyanたら云うファッション雑誌のモデルとか、なんちゃらかんちゃら取っ換え引っ換え、連れ回してたじゃん」

「あ、そだっけ?(笑)」

「まぁ良いや、 したら、この前 渋谷のマルキュー前で利紗世とバッタリ、6年ぶり? もう、誘うっきゃないっしょ!」

「で、やっちゃったわけ?」

「そう、やっちゃったわけ(笑)」

「あ、東野と北村、誘って車乗ってくるように言っといたから、お前も乗って来いよな。 ア・ス・ト・ロ!・・ んでさぁ、利紗世のマブで奈津子ってのがいるんだけど、これがマジ可愛いんだよなあ。 ・・俺,いきてぇー!」

「なに言ってんのお前 ・・ふぅーっ、秋彦、お前 ホント最低だな(笑)」

「あ、奈津子も連れてくるってさ」

「あっそ!」

「んでさ、自分で自分のこと “なっちゃん” って言ったりしてさ、くぅ〜っ、これがまた、かわゆいンだなあ。。。」

「んだから、もう、いいってば!」

その3 「出逢い」に続く


#創作大賞2024 #恋愛小説部門


いいなと思ったら応援しよう!