【終了しました】北大の先生が選んだ本(29)フィンランド・北欧に出会う本(田中佑実先生)
三省堂書店札幌店様とのコラボレーションコーナー「北大の先生が選んだ本」が現在展開中です。テーマは「フィンランド・北欧に出会う本」、選者は北海道大学大学院文学研究院文化人類学研究室助教の田中佑実先生です。本記事では、三省堂書店札幌店様にて配布中の選書リストを公開します。みなさまぜひ足をお運びください!
★三省堂書店札幌店様の紹介ページ:
「北大の先生が選んだ本」第29弾更新しました! | 三省堂書店 (books-sanseido.co.jp)
*「品切れ」などの在庫状況は2024年2月現在の情報です。
■選者紹介
田中佑実 (たなか ゆみ)
北海道大学大学院文学研究院助教
【専門】 人類学
■選者の著作
01 田中佑実著『死者のカルシッコ:フィンランドの樹木と人の人類学(楡文叢書6)』北海道大学出版会、2023年
「死者の印」をもつ樹木、死者のカルシッコはフィンランドのサヴォ地方を中心にかつて盛んに作られた。風習が終わりつつある今、「エラマ(生)」をキーワードに、カルシッコとともに生きる家族の想いと暮らしを描く。
定価:6,380円(本体価格5,800円+税)
ISBN:978-4-8329-6892-9
■選書リスト
01 トーベ・ヤンソン著『ムーミン童話限定カバー版 全9巻BOXセット』講談社(講談社文庫)、2014年
フィンランドと言えばやっぱりムーミン!子どもから大人まで楽しめる不朽の名作。冬戦争、継続戦争を経験したトーベ・ヤンソンがムーミントロールと仲間たちを描く、夢と冒険、愛と友情だけじゃない、怒りや寂しさを織り交ぜた素直な物語。キャラクターたちが放つ素朴な言葉が読むたびに違う色で染みわたってくる。
定価:6,116円(本体価格5,560円+税)
ISBN:978-4-06-939868-1
02 リョンロット編/小泉 保訳『フィンランド叙事詩 カレワラ(上・下)』岩波書店(岩波文庫)、1976年
19世紀の著作家で医師でもあったエリアス・リョンロットが自ら旅をし、人々から物語を集めて組み上げたフィンランドの神話的作品。世界の創造にはじまり、大魔術師ヴァイナモイネンの誕生から旅立ちを大筋としながら、パワフルな北の魔女ロウヒや鍛冶屋のイルマリネン、血の気たっぷりのレンミンカイネンといった登場人物たちによる、北欧神話や他の神話とはどこか一味違う人間味あふれる物語。
【上】定価:1,254円(本体価格1,140円+税)
ISBN:978-4-00-327451-4
【下】定価:1,254円(本体価格1,140円+税)
ISBN:978-4-00-327452-1
03 百瀬 宏;石野裕子編『フィンランドを知るための44章』明石書店、2008年
フィンランドに関わる人々が力を合わせて書きあげた「知るため」シリーズのフィンランド版。歴史から政治、経済、教育、言語、文学、芸術まで幅広くフィンランド事情を網羅した一冊。様々なテーマが44章に分けて記さているが、それぞれは互いに繋がりを持っている。専門家の記述だけでなく、鑑賞者的立場にある人々も執筆に加わった、読者の知識や興味が膨らむことを目指した本。
定価:2,200円(本体価格2,000円+税)
ISBN:978-4-7503-2815-7
04 石野裕子著『物語 フィンランドの歴史:北欧先進国「バルト海の乙女」の800年』中央公論新社(中公新書)、2017年
フィンランドを知るならまずはこれ。デザインやムーミン、教育、ITの発達を皮切りに北欧の先進国として、日本で注目されているこれまでのフィンランドの歩みを辿る。スウェーデンとロシアの両大国狭間で、フィンランドという国ができるまでの背景やその後の苦しさは、今日の「ゆるふわ」なフィンランドのイメージとは大きくかけ離れている。歴史的困難さの中に今のフィンランドがあることを多くの人に知ってもらいたい。
定価:968円(本体価格880円+税)
ISBN:978-4-12-102456-5
05 デイヴィッド・カービー著/百瀬 宏;石野裕子監訳『フィンランドの歴史』明石書店、2008年
より深くフィンランドの歴史を知りたい方へ。イギリス出身の筆者が独自の視点で細やかに描き出すフィンランド政治史。フィンランドがスウェーデン王国の一部であった時代から欧州連合の一員となるまでの時代を追う。近代国家となったフィンランドの変化はいかに起こったのか、またその変化は今日のフィンランドに何をもたらしたのかが問われる厚みのある歴史書。
定価:5,280円(本体価格4,800円+税)
ISBN:978-4-7503-2860-7
06 村井誠人;大渓太郎監修『一冊でわかる北欧史』河出書房新社、2022年
フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、アイスランド、デンマーク。北欧5か国の歴史を包摂する本書からは「北欧」を一つにまとめる共通点と、それとは真逆を行く各国を分ける相違点が見えてくる。スコープの絞りを調節しながら「北欧」の共通性と多様性を同時に描きだしていく。イラストと図で理解も深まりやすく、子供から大人まで楽しめる。
定価:1,870円(本体価格1,700円+税)
ISBN:978-4-309-81114-7
07 石野裕子著『「大フィンランド」思想の誕生と変遷:叙事詩カレワラと知識人』岩波書店、2012年
フィンランド研究を導く石野裕子先生の初作。カレワラの編者リョンロットが集めた口伝えの物語は、現在のフィンランド内だけではなく国境線を超えたロシア・カレリアから採取したものも含まれていた。フィンランドが国家を形成していく過程で精神的な拠り所となったカレワラは、国土拡大を目指す「大フィンランド」思想の根拠として解釈されていく。神話が政治と強く結びつく、フィンランドの事例に留まらないであろう一冊。
【単行本】定価:9,240円(本体価格8,400円+税)
ISBN:978-4-00-023800-7
※オンデマンド版あり
08 アンリ・ネノラ;センニ・ティモネン編/目莞ゆみ訳『ロウヒのことば:フィンランド女性の視角からみた民俗学(上・下)』文理閣、2002-2003年
執筆者は全て女性のフィンランド民俗学者というフェミニスティックな本。男性文化が記述したことばの文化の外に、何百年も締め出されていた女性たちのことばが女性研究者らによって明るみに出る。神話や民話、詩歌、伝統、習慣における女性の役割や視点が指摘され、フィンランドのフォークロアがより厚みをもって現れてくる。ヘルシンキ大学でお世話になった指導教員の若かりし頃を思う本でもある。
【上】定価:3,520円(本体3,200円+税)
ISBN:978-4-89259-379-6
【下】定価:3,520円(本体3,200円+税)
ISBN:978-4-89259-418-2
09 リトヴァ・コヴァライネン;サンニ・セッポ著/上山美保子監修/柴田昌平訳『フィンランド・森の精霊と旅をする』プロダクション・エイシア、2009年
私にとっての運命的な本。写真家である著者たちの行動力と粘り強さの結晶。「もうかつてのような聖なる樹木はない」と言われたフィンランドで、彼女たちは膨大な量のアーカイブ資料から聖なる樹木をあぶりだし、道中人々に尋ねながら聖なる木を探す旅をした。宝石のようにちりばめられた森や樹木に対する語りが写真とともに読者をフィンランドの森へ誘う。
定価:1,980円(本体価格1,800円+税)
ISBN:978-4-903971-01-8
10 ユーフォリアファクトリー編『TRANSIT 58号 春夏秋冬 フィンランドに恋して』講談社(講談社 Mook)、2022年
トラベル・カルチャー・マガジンのTRANSITがおくる永久保存版のフィンランド特集。デザイン、映画、サウナ、森、幸福、ムーミン、ヘビーメタルからロシアとの状勢まで、ライター達のひとつひとつの言葉が美しい。フィンランドの都市にいるような、森にいるような、旅をしている気分になれる本。でも同時におとぎの国ではいられないフィンランドの歴史と現状も見えてくる。
定価:1,980円(本体価格1,800円+税)
ISBN:978-4-06-530294-1
11 こばやしあやな著『公衆サウナの国フィンランド:街と人をあたためる、古くて新しいサードプレイス』学芸出版社、2018年
ユヴァスキュラで学生時代にお世話になったこばやしあやなさんによるサウナ研究。世界遺産登録に先立つサウナブームの火付け役。フィンランドの家庭にひとつはあるサウナは古くから特別な場所でフラットな空間。そんなサウナが街づくりや人々とのコミュニケーションの場として見直されている。筆者のフットワークの軽やかさを感じながらフィンランドの人々の声が聞こえてくるサウナーには言わずもがなな本。
定価:2,200円(本体価格2,000円+税)
ISBN:978-4-7615-2694-8
12 漫画:白樺鹿夜漫画/原作:江本マシメサ/キャラクター原案:あかねこ『北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし』主婦と生活社、2018-2024年
極寒の地を治める伯爵リツハルドと元軍人ジークリンデが夫婦になっていく様子がメインストーリーだが、ベリーやきのこ、白樺樹液の採取、狩猟、ものづくりにシエイティ(サーミの聖なる場)への信仰など、自然とともに生きる北国の暮らしや北方民族サーミの生活が丁寧に描かれ、穏やかなテンポで話が進んでいく。サーモンスープやピーラッカなどフィンランドらしい料理も登場。
1~9巻 定価:693円(本体価格630円+税)
10巻 定価:715円(本体価格650円+税)
【1】ISBN:978-4-391-15254-8
【2】ISBN:978-4-391-15340-8
【3】ISBN:978-4-391-15410-8
【4】ISBN:978-4-391-15473-3
【5】ISBN:978-4-391-15542-6
【6】ISBN:978-4-391-15621-8
【7】ISBN:978-4-391-15711-6
【8】ISBN:978-4-391-15784-0
【9】ISBN:978-4-391-15962-2
【10】ISBN:978-4-391-16186-1
13 ヨハン・トゥリ著/吉田欣吾訳『サーミ人についての話』東海大学出版会(東海大学文学部叢書)、2002年
サーミ最初の執筆家ヨハン・トゥリ(1854-1936)が語るトナカイと共に生きる伝統的なサーミの暮らし。サーミ自身によって自らの言葉で記述された点で、歴史的にも先住民による発信力の皮切りとなった大変価値のある作品。サーミの暮らしをロマンチックさの中に閉じ込めてしまうという現代の批判もあるが、伝統的なトナカイの遊牧生活や信仰、歌や伝承などが紹介されており、サーミを知る上でぜひ読んでもらいたい一冊。
定価:2,750円(本体価格2,500円+税)
ISBN:978-4-486-01571-0
14 イングリとエドガー・パーリン・ドーレア作/かみじょうゆみこ訳『オーロラの国の子どもたち』福音館書店、2018年
登場人物のラッセとリーセの兄弟はノルウェーのサーミ。オーロラが揺らめく雪と氷の世界が舞台のあたたかい物語。トナカイの仕事から、ものづくり、学校、教会まで、子どもの目線からサーミの冬を描く。しかし本書で描かれる学校や教会という場が植民地支配的な文脈の中にあったことを忘れてはいけない。こういった場が子どもたちと家族の間に介入し、サーミ文化内部でも歪みをもたらしたことは確かなのだから。
定価:1,650円(本体価格1,500円+税)
ISBN:978-4-8340-8361-3
15 葛野浩昭著『トナカイの社会誌:北緯70度の放牧者たち』河合出版、1990年
サーミ民族と深い結びつきをもつトナカイから人間の社会を読み解くトナカイ学のファーストステップ。1980年代後半のフィンランド、ウツヨキ地域でおこなわれたフィールドワークによる人々の言葉と自身の経験をもとに社会学的なアプローチをとる。トナカイの耳印、追い込み作業、トナカイの分布や手工芸、さらにはサーミ観光や開発、汚染の問題など幅広くサーミとトナカイが生きる社会を記す。
定価:1,602円(本体価格1,456円+税)
ISBN:978-4-87999-046-4
16 小内 透編著『北欧サーミの復権と現状:ノルウェー・スウェーデン・フィンランドを対象にして(先住民の社会学1)』東信堂、2018年
サーミ民族の現状を復権、議会、土地管理、生活や教育から記し、社会学的に取り組んだ専門書。ノルウェー、スウェーデン、フィンランドにおける今日のサーミ社会を政治的な視点から描き出す。第2巻『現代アイヌの生活と地域生活:札幌市・むかわ町・新ひだか町・伊達市・白糠町を対象にして』と合わせ、比較しながら読むと先住民権利を巡る諸相が現れ、一枚岩では語れない先住民を取り巻く複雑な問題が見えてくる。
定価:4,290円(本体価格3,900円+税)
ISBN:978-4-7989-1456-5
17 葛野浩昭著『サンタクロースの大旅行』岩波書店(岩波新書)、1998年
赤い服に白いひげをたくわえた、クリスマスに現れる太っちょのサンタクロース。あまりにも見慣れたこの老人は、はたして一体何者なのか、どこからやってきたのか。クリスマスが近づくと、ロヴァニエミのサンタクロース村では、この老人に会うために世界の観光客が長蛇の列を作る。フィンランド、ヨーロッパやトルコ、アメリカから日本まで地域横断的にサンタクロースの軌跡を追ったサンタクロース解読本。
定価:814円(本体価格740円+税)
ISBN:978-4-00-430591-0
18 アンッシ・ヨキランタ;ペッカ・ユンッティ;アンナ・ルオホネン;イェンニ・ライナ著/田中淳夫監訳/上山美保子訳『フィンランド 虚像の森』新泉社、2022年
森と湖の国の裏の姿。皆伐と一斉造林を繰り返してきた林業大国の土地は荒れ、樹木の質も脆く、泥炭は湖に流れこみ、フクロウはすみかを失いつつある。研究者、林業家、森林所有者、ハンター、活動家など、森に関わる様々な立場の人々の声をもとに、フィンランドの森の現在を告発する。それは虚像という名の一面性で捉えられるものではなく、紛れもなく森と人々が歩んできた事実であり、後の未来を考える地盤である。
定価:3,520円(本体価格3,200円+税)
ISBN:978-4-7877-2204-1
19 ニーナ・バートン著/羽根 由訳『森の来訪者たち:北欧のコテージで見つけた生命の輝き』草思社、2022年
北欧スウェーデンのコテージで、筆者自身と動植物との「対話」がポエティックな視点と生物学的な視点から紡がれる。本書は単なる筆者のコテージ生活を描いたものにはとどまらない。リスやミツバチ、アリや樹木の視点から記述される生物学的世界の広がりは、生物学者ユクスキュルの環世界に繋がるような深みを備え、それらが詩的に現れるなかで、今日の「自然と文化」を再考する人類学的議論と結びつく可能性を秘めている。
定価:2,530円(本体価格2,300円+税)
ISBN:978-4-7942-2611-2
20 ロビン・ウォール・キマラー著/三木直子訳『植物と叡智の守り人:ネイティブアメリカンの植物学者が語る科学・癒し・伝承』築地書館、2018年
北アメリカ先住民であり植物学者のロビン・ウォール・キマラーの第2作目。自らの人生の歩みとともに自然と人間の関係を考える。表紙を飾るスイートグラスのように、科学と伝承が著者の知恵によって美しく編みこまれた作品。植物との付き合い方や先住民の知恵だけでなく、自然と人間の相互依存性/レシプロシティーには尊敬と畏敬の念が必要であることを教えてくれた本。
定価:3,520円(本体価格3,200円+税)
ISBN:978-4-8067-1564-1
21 ペーター・ヴォールレーベン著/長谷川 圭訳『樹木たちの知られざる生活:森林管理官が聴いた森の声』早川書房(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)、2018年
ドイツの森で森林管理官を務めた著者がつづる経験に基づく樹木の生活。人間とは全く異なる存在として映る樹木も、実は私たちと同じように互いにコミュニケーションをし、教育をし、助け合いながら生きている。その方法はあまりにも違うため、私たち人間は長らくその深い知性に気づくことができずにいた。森に生える樹木、公園に佇む樹木、あたりまえに私たちを取り巻く樹木が変わって見えてくる。
【文庫版】定価:946円(本体価格860円+税)
ISBN:978-4-15-050531-8
※電子書籍版あり
22 スザンヌ・シマード著/三木直子訳『マザーツリー:森に隠された「知性」をめぐる冒険』ダイヤモンド社、2023年
カナダの森林生態学者スザンヌ・シマードが木々と菌根菌の結び付きを自身の人生と重ねながら書き綴る。森の木々は古いものと若いものが菌根菌を通じ、相互依存関係のなかで複雑なネットワークを作り上げている。このネットワークのハブであるマザーツリーを中心に幾重もの菌糸が地下で木々を繋ぎ、森をひとつにしている。これはおとぎ話ではなく、科学的に証明された森の知性に関する物語なのだ。
定価:2,420円(本体価格2,200円+税)
ISBN:978-4-478-10700-3
23 ローランド・エノス著/水谷 淳訳『「木」から辿る人類史:ヒトの進化と繁栄の秘密に迫る』NHK出版、2021年
イギリスの生物学者による人類の進化や歴史を木と人との関係性に基づいて捉え直した作品。石や青銅、鉄の利用が優勢だった人類史を、あまりにも身近で、または石や鉄よりも脆いものとして文明の下位段階に位置づけられ、見過ごされてきた木から新たに描き出す。樹木を通して人類史を解釈し直す試みである本書からは、筆者の知見が生物学に留まらず、建築や考古学、人類学にまで及んでいることが読み取れる。
定価:2,530円(本体価格2,300円+税)
ISBN:978-4-14-081874-9
24 ウィリアム・ブライアント・ローガン著/屋代通子訳『樹木の恵みと人間の歴史:石器時代の木道からトトロの森まで』築地書館、2022年
ニューヨーク、都会のど真ん中で樹木の手入れを生業とする筆者が、人が樹木とともに生きてきたあり方を萌芽更新から読み解いていく。萌芽更新は樹木を伐ることで生かすと同時に人の生活を支える技のこと。これを成すためには樹木を読み、どこで伐れば新たな芽が生えるかを見定めなければならないが、私たちは樹木と対話するための言葉を失ってしまった。動物とは異なる方法で樹木とともに生きるための道しるべ。
定価:3,520円(本他価格3,200円+税)
ISBN:978-4-8067-1633-4
25 星野道夫著『旅をする木』文藝春秋(文春文庫)、1999年
日記のように、手紙のようにアラスカへの道のりや人々と自然の出会いが短編で綴られる。動物学者ビル・プルーイットの著書の第一章「旅をする木」と同じ名前を持つこの本からは、星野自身だけでなく、彼と出会う人々や亡くなってしまった人々の人生の旅が垣間見える。そのためか、始まりと終わりを繰り返すトーテムポールの話、友人たちの死や新しい命に関する話など、全体的に生と死のトピックが織り交ぜられている。
定価:704円(本体価格640円+税)
ISBN:978-4-16-751502-7
26 松村圭一郎;中川 理;石井美保編『文化人類学の思考法』世界思想社、2019年
すべての考える人におくる文化人類学入門書。私たちの周りに溢れる身近なトピックから、具体例を用いて世界を考えていく。あたりまえという安定と同時に生じる生きづらさを、きっと揺るがせてくれる思考の道具箱。文化人類学の基本姿勢「あたりまえを問い直す」ための第一歩。文化人類学は遠さと近さの間で人々の生きるを扱う学問であり、フィールドの他者と自己の間で自らのあたりまえを問う試みでもあるのだ。
定価:1,980円(本体価格1,800円+税)
ISBN:978-4-7907-1733-1
27 山口未花子;ケイトリン・コーカー;小田博志著『生きる智慧はフィールドで学んだ』ナカニシヤ出版、2023年
北海道大学文化人類学研究室の智慧を集結させた一冊。身体、動物、生命という教員陣それぞれのテーマから近代西洋を支えたとされる「自然と文化」「自然と人間」の二元論を乗り越え、両者をもう一度繋ぎ直す試みをおこなう。教員、学生、各々のフィールドワークでの経験とともに読者を現代人類学の問いへ導いていく。
定価:2,970円(本体価格2,700円+税)
ISBN:978-4-7795-1608-5