北海道大学出版会
櫻井義秀・中西尋子『統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福』(北海道大学出版会、2010年)の2022年8月重版時に加筆された「まえがき(第四刷)安倍元首相銃撃事件と統一教会への対応をめぐる一考察」の全文公開です。
國分功一郎『中動態の世界』(医学書院、2017年) *仕事で読んだ本のメモです ■プロローグ ・「しっかりとした意志」「努力」「責任」という言葉では理解できない依存症の経験についての対話。日本語で話をしていても別の意味体系が衝突している。 ■第1章 能動と受動をめぐる諸問題 ・行為を「意志の実現」とするのは妥当ではない(無意識→意志→シミュレート)。諸条件のもとでの諸関係の実現と見なすべき。 ・能動態で表現される事態は実は能動の概念によって説明されない。「私が歩行する」は「
本書詳細はこちらから↓ 分断された世界をつなぐ思想 ― より善き公正な共生社会のために | 北海道大学出版会 (hup.gr.jp) 温暖化、パンデミック、戦争、核の脅威、等々、地球規模の文明の危機が現実化しており、人類の危機を訴える文明論も盛んな時代である。 そこで多くの人が次のような思いや不安を漠然と抱いているに違いない。 (1) 人類を救うための「新しい思想」が必要ではないのか。それは「哲学」・「社会思想」などによるであろう。 (2) ところで、一方で「哲学」は個人
詳細はこちらからどうぞ↓ 当事者が語る「貧困とはなにか」 ― 参加型貧困調査の可能性 | 北海道大学出版会 (hup.gr.jp) ■ 序章 貧困理解におけるもう一つの視点*脚注は省略しています 1 研究の目的とその背景 本研究の目的は、貧困当事者を包摂する参加型貧困調査(以下、参加型貧困調査)を通じて、貧困当事者の主体側から貧困を理解することである。本研究は、貧困当事者が受動的な客体として調査されるような従来の貧困調査と異なり、日本ではまだ前例が少ない参加型貧困調査
三省堂書店札幌店様とのコラボレーションコーナー「北大の先生が選んだ本」が現在展開中です。テーマは「今こそ、戦争を考える」、選者は北海道大学大学院文学研究院専門研究員の相庭達也先生です。本記事では、三省堂書店札幌店様にて配布中の選書リストを公開します。みなさまぜひ足をお運びください! ★三省堂書店札幌店様の紹介ページ: 「北大の先生が選んだ本」第30弾更新しました! | 三省堂書店 (books-sanseido.co.jp) *「品切れ」などの在庫状況は2024年7月現在の情
イギリスに滞在していた時期、下宿先の近くに住んでいたインフォーマント の自宅を度々訪れる機会があった。彼女は最近夫を亡くし、自然埋葬地に埋葬したばかりだった。日本からきた学生が調査のため自然埋葬の実施者を探していると地元新聞の広告で見かけ、自ら連絡をくれた人物である。気丈な彼女は訪問のたび、玄関先で筆者を笑顔とハグで迎えてくれたが、その大きな瞳はいつも彼のいない孤独を湛えているように少しだけ潤んでいた。 彼女の家を訪れるときは決まって、小さな中庭の見える、少し薄暗いキッチ
三省堂書店札幌店様とのコラボレーションコーナー「北大の先生が選んだ本」が現在展開中です。テーマは「フィンランド・北欧に出会う本」、選者は北海道大学大学院文学研究院文化人類学研究室助教の田中佑実先生です。本記事では、三省堂書店札幌店様にて配布中の選書リストを公開します。みなさまぜひ足をお運びください! ★三省堂書店札幌店様の紹介ページ: 「北大の先生が選んだ本」第29弾更新しました! | 三省堂書店 (books-sanseido.co.jp) *「品切れ」などの在庫状況は20
*仕事で読んだ本のメモです 三木理史『国境の植民地・樺太』(塙書房 2006年) プロローグ 国境と植民地 Peattie, M.R.によれば日本の植民地の地理的特徴は内地を取り囲む「防波堤」であること(インドやアルジェリアとは違う)。搾取・投資型植民地の研究にもとづく既成概念に対し、移住型植民地としてみた樺太、北海道の研究から植民地の問題と北海道史を再考する。 庶民の多くが国境を正確に意識するようになったのは大正~昭和初期。満州族政権の清朝期にはサハリン島を「庫頁島
本屋は誘惑の場所だ。 本たちが、「読んでみなよ」と誘う。 あるいは、「読めんのか?」と煽る。 さらに、本の中に引用された本、参考文献としてあげられた本、著者紹介に載っている既刊書などなど、本と本とが手に手を取って、声もなく我が袖を引く(イタロ・カルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』(脇功訳、白水Uブックス)の冒頭部分を思い出しながら)。 負けてはいけない。 いや、負けていいのだ(みんな、もっと負けよう)。 積極的に負けつづけた結果、本は静かに積み上がる。 そし
本書では、フィンランドのサヴォ地方を中心とする地域で行なわれていた死者のカルシッコ、フィンランド語でvainajan karsikko(ヴァイナヤンカルシッコ)と呼ばれる樹木をつくる風習を紹介しながら、樹木と人々の生身の繋がりを描く。 死者のカルシッコは、フィンランドのサヴォ地方を中心とする地域において一六世紀後半または一七世紀から盛んに作られたとされる死者の印を持つ樹木である。印を持つ樹木だけでなく、その印自体もカルシッコと呼ばれる。死者のカルシッコは、家から墓場へと繋がる
ユーカへ向かうある冬の日、私はヨエンスーのスーパーを出て、居候先の友人宅まで雪の地面を小走りしていた。腕には新聞紙にくるまれたチューリップのつぼみたち。マイナス15度の外気のために、せっかくの花が凍らないか心配で、両腕で子供を抱きかかえるようにして急いでいた。このかわいい花たちはユーカに住むイーリスとティモへのおくりものだった。 フィンランドの北カレリア地方、ピエリネン湖に面した小さな街に行くのも、今では随分こなれたものになった。この田舎町ユーカへは、フィンランドの首都ヘル
*仕事で読んだ本のメモです。 新潟大学日本酒学センター編『日本酒学講義』(ミネルヴァ書房 2022年)序章 日本酒学への招待 鈴木一史・岸保行 ・新潟大学で2018年にスタートした「日本酒学(Sakeology)」の取り組みについての紹介。日本酒学のコンセプトと設立の経緯について。 ・日本酒学とは日本酒という限定された対象を領域横断的に(農学、工学、理学、経済学、経営学、人文学、社会学、法学、教育学、歯学、薬学、保健学など)研究する総合科学。 ・新潟県、新潟県酒造組合、新
積ん読と云うのは、人の思わくに調子を合わせてそう云うだけの話で、自分で勿論積ん読でいいやなどと考えてはいない。すぐに読む気がなければ本を買ってはいけないと云うわけはない。すぐ読む積もりはないけれど、本屋に行って本を買って来ようと思う。 (以上、内田百閒「特別阿房列車」書き出しを元に。『第一阿房列車』(新潮文庫)参照)。 てな具合いの、百鬼園阿房列車マインドで、日々の本屋旅行&積ん読である。件の内田百閒は、旅先で手持ちの高山樗牛全集第七巻を古本屋に売って切符代を捻出したり
*仕事で読んだ本のメモです 井上暁子編『東欧文学の多言語的トポス』(水声社 2020) 編者まえがき 科研基盤Bの助成を受けたシンポジウムの報告に加筆・修正を加えた論文集。「東欧」「中欧」「中東欧」について。作家たちによって「中間性」を強調する「中欧アイデンティティ」の試みと、商業的な「中欧」イメージ、難民の流入を背景にしたナショナリズムの高まり。多様性の価値観は失われつつある。東欧とその外部(各言語圏の「中心」)の関係(横のつながり)の重なり合いによる「文化的ダイナミズ
本を眠らせ、本の尾根に本ふりつむ。 いや、「尾根」という表現はこの部屋の実態を反映しておらず、本の山脈というよりも、本の群島がまずは起源的に形成され、それらが徐々に隆起して、初めは独立した島々と見えたものが結果的にひとつの高原(プラトー)として存在する状態。 ミル・プラトー(©ドゥルーズ&ガタリ)ならぬ、ヨム・プラトー。 簡潔に言うと、ほぼ読んでいない本が、床面積の大半を一定の高度で占拠している。 《本って、閉じているとき、中で何が起こっているのだろうな?》 ミヒ
三省堂書店札幌店様とのコラボレーションコーナー「北大の先生が選んだ本」が現在展開中です。テーマは「ヒグマ学と自然・文化の多様な世界」、選者は北海道大学大学院理学研究院教授の増田隆一先生です。本記事では、三省堂書店札幌店様にて配布中の選書リストを公開します。みなさまぜひ足をお運びください! ★三省堂書店札幌店様の紹介ページ: 「北大の先生が選んだ本」第28弾更新しました! | 三省堂書店 (books-sanseido.co.jp) *「品切れ」などの在庫状況は2023年5月現
藤本大士『医学とキリスト教』(法政大学出版局 2021年) 序章 先行研究で包括的な研究がないので、医学史とミッション史両方の観点から、幕末ーアジア・太平洋戦争後までに来日したアメリカ人医療宣教師を教派にかかわらず宣教看護婦も含めて網羅的に取り上げる方法をとる。すごい。 1章 幕末期。シモンズみたいに宣教よりも医学の普及に関心があった宣教師もいたのは意外。 2章 1870年代。アメリカ人医療宣教師は公立の医学校・病院にはあまり関わらなかったが医学生たちが臨床を学ぶために医療