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介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる 連載第21回 「パワハラの法律的な側面②-グレーゾーンの対処」

こんにちは。ラボ事務局の杉田です。
今週もラボ代表及川による「介護新聞」連載企画(第21回)をお届けいたします。
第21回のテーマは「パワハラの法律的な側面②-グレーゾーンの対処」です。

前回記事に引き続き、パワハラについて法的な側面から解説していきます。
どういった行為がパワハラに該当するのか、法律で明文化されています。つまり「これをすればパワハラ」と明確に定義はされているんですね。ただそうは言っても、実際にパワハラと疑わしき行為に当てはめようとしたときに、その解釈が難しいところでもあります。

本記事では、事例をもとに該当する場合とそうでない場合をわかりやすく解説しています。ぜひ参考にしていただき、パワハラの理解を深めていただければ幸いです。

介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる
連載第21回 「パワハラの法律的な側面②-グレーゾーンの対処」
 今回はパワハラのグレーゾーンに焦点を当て、具体的なケースを通じて法律的な解釈を提供します。

 厚生労働省は、パワハラに該当する行為を
①身体的な攻撃=暴行や傷害など
②精神的な攻撃=脅迫、名誉棄損、侮辱、過度の暴言
③人間関係からの切り離し=隔離、仲間外し、無視など
④過大な要求=業務の妨害、明らかに業務上不要な行為や遂行不可能な要求の強制など
⑤過小な要求=業務上の合理性を欠いた、能力や経験に見合わない低いレベルの仕事を命じる行為、あるいは仕事を与えないことなど
⑥個の侵害=私的な事柄に過度に介入する行為など
―に分類しています。

さて、次に示す事例はどのカテゴリーに該当するか考えてみてください。

1「反抗的な態度を取り、席を立って部屋から出て行こうとした部下の肩を、思わず強くつかんだ」
2「何度指導しても毎回同じミスをする部下に対して、『何年この仕事をしているんだ、こんなの小学生でもできるぞ!』と声を荒らげてしまった」
3「やる気のなさそうな部下に対して、最小限の指示をメールだけで行うようにした」

 これらの事例は全て「ケースバイケース」であり、パワハラに該当するか否かは状況によります

 1は①の事例となります。ここで重要な判断基準となるのは、その行為が必要かどうか、冷静な対応がなされていたか、あるいはその行為が暴行と見なされる可能性があるかどうかです。
 パワハラに該当するのは、必要以上に強く肩をつかみ、その前後のやりとりで相手を非難したり、暴言を吐いたりした場合が挙げられます。
 該当しない場合としては、部屋から出て行こうとする部下を多少強めに制止してその後すぐに手を離したケース、または部下の態度が極端に悪く、冷静に注意しても全く聞き入れないため、制止する程度の力でつかんだケースなどがあります。

 2は②の事例です。判断ポイントはその発言が人格を否定する可能性があるかどうかです。状況次第ではありますが、人格に触れるような発言はなるべく控えることが望ましいです。
 該当する例として、ミスをするたびに罵声(ばせい)を浴びせ、これを指導と考えているケースが挙げられます。
 該当しない場合としては、丁寧に指導したにもかかわらず同じミスを繰り返し、その結果として会社や関係者に重大な迷惑をかけたためその時点で一度だけ発言したケースが考えられます。

 3は③の事例となります。重要な判断基準は、やる気のなさそうな部下との関わりを避けて、情報共有を制限する行為がパワハラにつながる可能性があるかどうかです。その部下との関わりを深め、部下の思考や感情を理解する対話を通じて、お互いの認識を揃(そろ)え、情報共有を行うことが求められます。
 該当する例として、他の部下には送っているメールを特定の部下にだけ意図的に送らず、コミュニケーションを避けるなど、部下を孤立させる行為が考えられます。
 該当しない場合としては、全員宛のメールや本人の業務に必要な情報は適宜送信し、直接の対話よりもメールでの連絡が本人にとって理解しやすいと判断し、その上で本人と調整した結果、その部下だけ連絡方法を変更したケースが考えられます。

 これらの事例を通じて、私が伝えたいポイントの1つは、「人間は限られた情報で即座に判断を下す傾向にある」という事実です。何かを伝えようとする際には、情報を簡潔に整理して伝えることが求められます。しかし、パワハラ判断の際に重要となるのは、その発言や行動の前後の状況です。情報を解釈する私たち自身の感情が影響を与えます。

 前回の記事でパワハラの起こるメカニズムは「心=感情」の問題とお伝えしました。次回はこの「心=感情」のメカニズムについて、更に詳しく説明します。

介護新聞6/23付「介護福祉事業所の人事労務戦略室―次世代リーダーを育てる!!」
http://wwu.phoenix-c.or.jp/~medim/kaigo/2023/202306kaigo/kaigo20230623.html

今週もご訪問いただきありがとうございました!
また次回、第22回の記事でお会いしましょう!

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