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介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる 連載第20回 「パワーハラスメントの法律的意義①」

こんにちは。ラボ事務局の杉田です。
今週もラボ代表及川による「介護新聞」連載企画(第20回)をお届けいたします。
第20回のテーマは「パワーハラスメントの法律的意義①」です。

前回記事では「褒める、叱る」について言及しましたが、それに付随した内容で今回は「パワーハラスメント」をテーマに取り上げていきます。

今や健全な職場環境を形成する上で欠かせない要素となっているパワハラ問題ですが、やはり人と人がともに働く上でどうしても起こりやすく、解決が容易ではない難しい問題です。

生まれた年や育った環境、経験してきたことなど何もかもが違う人同士だからこそ、「どこまでが指導で、どこからがパワハラか」という問題は、それぞれの思いや言い分を抜きに、ひとつ整理して置かなければなりません。

もし、ご自身の職場でパワハラ問題についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、本記事をご参考にまずはその問題が法律上のパワハラに該当するかどうか、ご判断いただいた上で対策を立てていっていただければと存じます。

介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる
連載第20回「パワーハラスメントの法律的意義①」

 今回から労務管理の核心的なテーマの1つ、パワーハラスメント(以下、パワハラ)について深く掘り下げていきます。前回、褒めると叱るの要点について触れました。特に叱るについては、パワハラを防ぎつつ適切な指導を行いたいという悩みを抱える現場リーダーは多いのではないでしょうか。特に「パワハラは予防する」という思考を常識として持つことが大切です。

 パワハラが発生してしまった場合、その後の処理が長期にわたり、対応が困難で重大な労務問題となります。後手に回った対応にはウルトラCの解決法は存在しません。真剣に、誠実に対応するしかないのです。この際に必要となる時間、経済的費用、精神的負担を考慮すれば、「パワハラは予防する」という知識と技術は計り知れない価値があります。

 パワハラは1つずつ問題を解決しても、繰り返し発生します。だからこそ、パワハラが起きた後の対処法ではなく、パワハラが起きないためのスキルが求められます。その実現のために、リーダーは自身の行動を変えて、パワハラの無い理想的な職場を作り上げるマインドセットをしてもらいます。

 パワハラが発生するメカニズムを理解するためには、パワハラの根源が「心=感情」にあることを認識することが重要です。「心=感情」の問題は、たびたび見過ごされがちですが、これこそがパワハラの深層に影響を及ぼしています。この「心=感情」へのアプローチ方法を理解し、効果的に対応するスキルを身につけていくことが求められます。安心して働ける環境を提供することで、組織全体の生産性向上にも寄与します。

 2020年6月1日にパワハラ防止法が施行され、企業はパワハラ対策が法的義務になりました。具体的には、パワハラの定義と認識の普及、従業員研修の実施、相談窓口設置、そして社内ルール策定とその違反者への対応等が挙げられます。

 現場での課題と法律上の定義は、必ずしも一致しない部分があります。それらを適切に理解し、対応することが求められます。最初のステップとして、法律的な意義を含む基本的な知識の習得が必要です。

 厚生労働省が定める職場におけるパワハラの定義は以下のようになっています。全てがパワハラとされるわけではなく、次に挙げる3つの要素全てを満たした行為が法律上のパワハラとされます。

 1つ目「優越的な関係を背景とした言動」で、パワーバランスの存在する関係性を指します。例えば、上司から部下へのパワハラが該当します。「職位」以外にも、「知識」や「集団」「経験年数」を軸にしたパワーバランスもパワハラの源泉となり得ます。

 2つ目「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」。業務上の必要性があれば厳しい指導もパワハラには該当しないことを示します。したがって、部下がその指導を不満に思っていたとしても指導内容が適切であればパワハラには該当しません。

 3つ目「労働者の就業環境が害されるもの」で、身体的・精神的苦痛が「平均的な労働者」の感じ方に基づいて評価されることを意味します。前述のように、部下が不満に思っていても指導が適切であれば認定されません。

 このように法律上は定義されていますが、部下が不満を持っている状況を放置するのは適切ではありません。また、指導の厳しさを一方的に強めるのも問題です。このあたりが現場と法律の間にある違いとなります。

 想像してみてください。前記の法律定義を満たすとしても、常に厳しい指導ばかりの職場は、本当に働きやすい職場と言えるでしょうか?私だったら、間違いなく精神的に折れてしまいます。自分が一生懸命に努力しているにも関わらず、その労力が認められないならば、退職を真剣に考えることでしょう。

 今回の重要ポイントは、何でもかんでもパワハラになるというわけではなく、法律上の定義を満たす行為がパワハラとなります。リーダーとして、これを肝に銘じておくことが求められます。

介護新聞6/16付「介護福祉事業所の人事労務戦略室―次世代リーダーを育てる!!」
http://wwu.phoenix-c.or.jp/~medim/kaigo/2023/202306kaigo/kaigo20230616.html

今週もご訪問いただきありがとうございました!
また次回、第21回の記事でお会いしましょう!

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